こんにちは、基幹システム部メンテナンスチームの矢野です。
今回は僕のチームで行っている毎日勉強会について書いていきたいと思います。
- 新しいインプットの機会創出
- 組織内の技術力のベースアップ施策
- 社内コミュニケーション
このようなことを考えている方の参考になればと思います。
経緯
まず毎日勉強会というものが形作られた経緯ですが、チームまたは部署のために下記の3つの事柄の質を向上できないかとぼんやり頭の中で考えていたことがきっかけでした。
- 自部署のブランディング(必要とされる部署になる、自分たちの見解を持つ)
- 部署内コミュニケーション向上(朝礼など)
- 部署のメンバーがエンジニアとして渡り歩いていくための手助け(心理的安全性)
まず1つ目は自部署のブランディングです。
ブランディングと書くとちょっとお高い感じに聞こえちゃいますが、要は社内で必要とされるよう部署の価値を上げていきたいということです。「ZOZOの基幹のことは基幹システム部に任せておけば大丈夫」という認識を社内に一層持ってもらいたい、そういった社内の信頼を上げるためにはどのようなことをしていけばいいか、どのような組織に成長させたいかを考えていました。
2つ目がコミュニケーションの向上です。
僕が所属しているメンテナンスチームは、2019年5月から発足した比較的新しいチームです。今まで別々のチームに所属していた4人が集まり、緊急施策で優先度が下がった案件やリファクタリングなどのビジネスにはかかわらないが、必要なシステム改修を行うチームとしてスタートしました。
全く別々のチームで業務を行っていたメンバーが集まったため、発足当初はコミュニケーションがうまく図れず4人で黙々と作業をこなす日々でした。チームリーダーとしては「これはもうちょっと雑談とかできるような雰囲気にしたほうがいいな」と感じ毎朝5分間の雑談タイムを始めました。ランダムでネタを提供してくれるアプリを使いながら毎日やっていたため、ネタには困りませんでした。しかし、3か月もするとマンネリ化してきますし、メンバーの距離も縮まってきたため朝の雑談タイムは一旦ストップしました。
でもこの朝の雑談タイムがきっかけで、チーム全員で何か1つのことをやるという時間は、別の形で続けていきたいなと思うようになりました。
朝礼は自分の中で永遠のテーマですね。マンネリ化しない有意義な朝礼。これが思いついたらまたテックブログ書きますね。
3つ目に部署のメンバーがエンジニアとして渡り歩いていくための手助けです。
ZOZOの基幹システムはすでに安定した環境が出来上がっているので技術的にはその環境内での改修が主になります。ビジネス部門や倉庫の要望を改修し形にしていきますがそうなるとどうしても業務だけでは新しい技術への接点が少なくなります。メンバーには、エンジニアとしての視野を少しずつでも広げていってもらいたい。そのためにはエンジニアとしてのアンテナの張り方や新しい技術に触れる機会をこちら側から提供できれば成長の支援になるのではないか。そんな思いもありました。自分たちは基幹システムを改修する人ではなく、あらゆる問題をシステムで解決する集団という風に意識を一段階アップできれば先に書いた他部署からの信頼にも寄与できるのではないかと思っています。
枠組み・やること
では、上記のような考えを形にするにはどうすればいいんだろう??
3つの軸で考えてみました。
- 絶対やりたくないこと
- 期待すること
- 現状(現実)
絶対やりたくないこと
まず1つ目の軸ですが、これらを達成する手段として絶対にやりたくないことを考えてみたところ2つありました。
- 強制はイヤだ
- 途中離脱はイヤだ
真っ先に思ったのは強制的に何かをやらせることだけは避けたいということです。自主性を重んじた枠組みを作ることがこの枠組み自体を最大限有意義に活用でき、活用していくことで得られる成長やコミュニケーションにおいて都合よく働くと思ったからです。
中学生の時の実体験として「ギターを弾けるようになりたい」と思ったその時のモチベーション・初期衝動がギターを弾けるようになった一番の理由だと確信しています。
このことからも自主的に何かをやりたいと思った時が一番吸収する時期であることは間違いないです。
またやるからには途中で離脱できるような環境は作りたくないと思いました。ただ「途中離脱できない環境を作る」と考えると「絶対やりたくないこと」で書いた強制力が顔を出してきそうだったので、途中でやめられないようにレールを敷くのではなく、途中でやめてしまう理由を排除していって結果的に途中離脱がなくなるようにするといったイメージで考えを組み立てていくようにしました。
期待すること
2つ目の軸でこの枠組みに期待することは3つありました。
- 新しい技術に対するハードルを下げておきたい
- チームをまたいだ交流の活性化につなげたい
- 書籍購入補助制度を有効活用したい
先に書いたように現状ZOZOの基幹システムの開発は一定の技術を覚えればあとはビジネス部門や倉庫と話を詰めて案件を進めて行くことができます。ですが、今後モダンな環境へとリプレースする時期が必ずやってきます。そうなったとき、いきなりメンバーに使ったことのない技術を使って開発しろとなるとそれこそ効率的な開発などできませんし、その技術を習得するまでに時間もかかってしまい最悪案件を進められない時間が出てくる可能性もあります。経緯のところで記載した自部署のブランディングも保てなくなるかもしれません。なので、まずは新しい技術に対するハードルを下げておけるようなものにしたいと考えました。
次はチームをまたいだ交流を盛んにしたいというものです。弊社では、チームが組織の一番小さい単位になります。このチームという単位で業務を遂行する場面がほとんどなのでチーム内の交流は自ずと図れるのですが、その1つ上の「部」という単位での交流もさらに活性化させられたらいいなと思いました。最終的には部という枠も取っ払って社内の誰もが交流できる場を提供できたら最高ですね。
最後は書籍購入補助制度の有効活用です。弊社には書籍購入補助制度というものがあります。これは購入した書籍をレビューして経費申請すれば全額を精算できる制度です。会社の経費で購入した書籍は絶対に無駄にしたくないので(自腹で買った本であれば自分の好きにすればいいですが、経費はみんなが頑張って稼いだお金ですから無駄にしたくないですね)買ったからには最大限有効活用できる方法を見出してこの制度をさらに有意義に使えないかと考えました。ともあれ書籍を最後まで読むって達成感得られますよね。
現状(現実)
3つ目の軸には現状(現実)と書きましたが、これは実際に行われている勉強会などスキルアップするための機会についての問題点を考えてみました。
- 社内勉強会などで自分の興味が有るものが開催されるとは限らない(実体験)
- 講師がいる勉強会はわかったつもりになって終わることも結構ある(実体験)
- スケジュール調整できずに参加しなくなるとそのまま離脱してしまう(実体験)
- 興味があってもなかなか勉強に着手できる時間がとれない(実体験)
- 本を買って一人で勉強しても最後まで続かない(実体験)
全部実体験です。
こう見るとやっぱり自主性って成長にとって最大の栄養素なんだなと思えてきます。自主性をうまく成長へのモチベーションに変えられるような枠組みが作れれば上記のような問題も解決できるのではと思いました。
そして、ここから導き出した1つの答えがこちらです。
「 勉強したい人には勉強する時間を毎日1時間与える 」
これにより前述した問題点や希望することの中で解決できることがいくつかあります。
問題点・期待すること | 解決理由 |
---|---|
強制はイヤだ | 勉強したいと思った人が使える時間なので強制ではなく完全自主性 |
新しい技術に対するハードルを下げておきたい | 新しい技術も含め興味のある分野を習得できる時間として使える |
社内勉強会などはあるが、自分の興味が有るものが開催されるとは限らない | 興味を持った段階でそれについて学習できる時間が得られる |
興味があってもなかなか勉強に着手できる時間が取れなそう | 上長と相談の上、業務調整ができれば時間も確保できそう、というか時間を確保するために調整するというメリハリがつけられそう |
ただ、これだけではこの時間に何をやればいいか迷いそうなのでもう少し決めごとを作りました。
追加で考慮したいこと
- 途中離脱はイヤだ
- 書籍購入補助制度を有効活用したい
- 講師がいる勉強会はわかったつもりになって終わることも結構ある
- スケジュール調整できずに参加しなくなるとそのまま離脱してしまう
- 本を買って一人で勉強しても最後まで続かない
- チームをまたいだ交流の活性化につなげたい
この辺りを何とか枠組みに追加できないかと考え、出てきた答えがこちらです。
「1冊の本を興味のあるメンバーを募って最後までやる」
これで追加で考慮したいことがカバーできそうです。
問題点・期待すること | 解決理由 |
---|---|
途中離脱はイヤだ | 一冊の本を最後までやりきるという枠組みを作ることにより途中離脱を無くします。(終わらせる期限をつけないことがポイント) |
書籍購入補助制度を有効活用したい | 書籍を一冊最後までやりきるということを枠組みとします。 |
講師がいる勉強会はわかったつもりになって終わることも結構ある | 興味がある人が集まって同レベルで勉強していくことで全員に当事者意識が生まれる。 |
スケジュール調整できずに参加しなくなるとそのまま離脱してしまう | あえて期限を設けないので離脱する要因が減ります(後述します) |
本を買って一人で勉強しても最後まで続かない | 複数人でやることで補いあいながら最後まで進められる(複数人いることで見えない抑止効果もあるかも) |
チームをまたいだ交流の活性化につなげたい | 勉強したい本が見つかった人はこの本の内容に興味がある人を誘います。賛同者をチーム外からも集められるので交流の場が広がります。 |
できた!
上記をまとめるとこんな枠組みが出来上がりました
勉強したい本が見つかった人は同じ興味を持った人を募り(最大4人)毎日1時間全員でその本を最後まで勉強する
ここで補足です
この枠組がなぜ「毎日」なのか、なぜ「4人」なのかというところです。(補足だけど重要なポイント)
参加型の勉強会を見てきて運営が難しそうなだと思ったところがあります。
問題点 | 理由 |
---|---|
参加者の続けるモチベーション | 回数を追うごとに参加者が減っていく |
参加者の当事者意識 | 参加しているという事実だけでわかった気になってしまっている。(自分はこの手の人間です) |
1回の欠席がフェードアウトのきっかけになる | 講義を一度欠席するとだんだん内容がわからなくなり途中離脱を助長させる |
これって大勢を集めてやるからこそ生じる問題点ではないかと考えました。
講義の開催者側としては受講生は大勢いるので一人が休んだくらいでは講義を止められない。受講者側の心理としては大勢だと自分ひとりが休んだくらいでは講義は止まらない、最悪自分はついていけなくなるかもしれないが他の受講者に迷惑をかけることはないので欠席することへのハードルが下がる。一回休むと講義は進むので理解に遅れが生じ途中離脱へ・・・
この辺りは「毎日やる」「最大4人での開催」というルールを定めることでいい方向に持っていけそうでした。
- なぜ毎日なのか
まず前提としてこの枠組みは有休や急なミーティング等で参加できなくなるのはOKとしています。勉強会のことは気にせず有休をとったり緊急案件の対応してもらいたいです。一人が参加できなくなった場合はその日の会はスキップしますが翌日また全員が集まった日に続きをやればいいのです。毎日といっているのに矛盾していますが毎日参加者が全員集まれる日に開催するというラフな感じです。
スキップOKが前提なので例えば開催日を毎日ではなく週1回にすると次の会が次週になってしまいます。1週開くと進みが遅く途中離脱を助長させそうなので開催は基本毎日です。ここが「毎日」とした理由です。
このような枠組みなので前述しましたが期限は設けていません。誰も離脱することなく最後まで終わらせるため、できる日は毎日書籍が終わるまで全員参加で行うというルールです。
- なぜ4人なのか
有休や急用での会のスキップを参加者に切り出しやすい最大人数は4人位と想定しています。講師なしで進めるので個人個人が当事者意識を持てる最大人数も4人と想定しています。みんなで協力しあえる最大人数も4人と想定しています。失敗しても恥ずかしくない最大人数も4人と想定しています。完全に感覚値なのですが皆さんも4人と5人では5人の方が上記のバランスが崩れそうな感じがしませんか?
こうして出来上がった毎日勉強会の仕組みを利用して僕たちメンテナンスチームでは現在3冊目の本を絶賛勉強中です。
コロナ禍で全員在宅勤務ですが毎日14時にテレビ会議をつないでDockerの勉強をしています。進め方は扱う書籍によって変わってくるので枠組みの中には入れていません。適宜集まったメンバーで進め方を考えて勉強していけばいいと思います。演習やハンズオンが多くある本であればみんなでやりながら全員が同じようにできるまで進めるでもいいですし読み進めるような書籍であれば章や区切りやすいところまで読み進めまとめでディスカッションという形式でもいいと思います。そこは自由です。
4人のうちだれか一人でも置いてけぼりにならないようにというところにだけ気を付けて理解が早い人はフォローして進めることが大事だと思います。
会社や組織によって毎日1時間の時間を割くということは調整が難しい場面も出てくるかもしれません。上長や周囲と相談し業務調整の上、毎日1時間の勉強時間が取れればなるべく毎日4人がそろった日にみんなの興味のある書籍を進めるという気軽な気持ちで始めてもらえるといいと思います。
まとめると
毎日勉強会を開催すると参加者全員が興味のある書籍を当事者意識をもって最後まで読み切ることができます。
これにより、参加者は勉強したことはもちろんコミュニケーションの向上などが得られます。管理者としてはメンバーの学習機会の創出ができます。
またこの枠組みは一冊の本を最後までやりきることを目的としていてそれを達成できるようにスキップOK、毎日やる、参加者は4人、期限を設けないなど手軽に始められるようにも考慮されているのでぜひ調整がついたら一回やってみてもらいたいです。
今後社内に広がって所々で自然発生的に行われる文化になれば最高だなと思っています。
いかにシームレスに始められそして参加者がドライブしやすいインプット支援の方法を考えたら、毎日勉強会という1つの方法にたどり着いたというお話でした。
あとがき
上記のことが全部ひとりでできちゃう人はもちろんたくさんいると思います。自分はHowToやメソッドを考えるプロではないので実体験などから自分だったらこうやればストレスなく始められるな、こうやれば途中で諦めることなく続けられるなという目線で組み立てていきました。
仕組みを作る上で、はみ出さずにゴールまで導きたいときにはレールを敷くのではなく、なぜはみ出すのかを考えその理由を1つずつ排除していくことで自ずとはみ出さずにゴールまで行きつくという考え方があることに気付けたのもいい経験になりました。
この毎日勉強会の枠組みもなるべくレールを敷かないようにしていますのでフレキシブルな対応に頼っているところは多々あります。ルールとして決めるところは決める、でもそれ以外のところは当事者同士でフレキシブルに対応という形が取れれば管理しなくても自発的に動いていく仕組みができていくのかなと思いました。
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