小売業界も「AI」はバズワードではなく当たり前になる(NRF2019参加レポート)

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こんにちは、ZOZOテクノロジーズでプロジェクトマネージャーをしている新井(@masamasaking)です。

最先端の小売業界のトレンドを体験できる全米最大のリテール向けのイベント「NRF Big Show」が今年も1月13日から開催されました。現地視察を通じて感じたことをレポートします。 この記事では気になった出展企業や全体を通して感じたことをご紹介します。

NRF Big Showとは

世界99カ国から機器やソリューションが800以上の出展。37,000人が参加するNRF(全米小売業協会)が行っている小売業界向けのイベントです。展示と並行して6つのステージで3日間セミナーやキーノートスピーチも行われ小売業界の今がここに集まっていきます。

気になった展示

AIがもはや当たり前かのように

f:id:vasilyjp:20190116162130j:plain AIやMLを使ったオムニチャネル化、商品トレンドの分析、需要予測、ダイナミックプライシング、価格算出など顧客体験の向上や業務オペレーション改善だけでなく小売のいたるところにこれらの技術を使われるのは必須でした。オフライン上でのデータを収集およびユーザーごとにデータを蓄積し、足元の店舗の最適化からその先のダイナミックプライシングやディスプレイの見せ方の個別最適化の進んだ世界が近い将来くることが伺える。消費者が何を求めていて、どのタイミングで商品を並べるのか、どういった価格で・どういった情報を訴求するのか・・・・といった課題に対してAIやMLがこれでもかというくらい絡んでくる。これまでバズワードであった「AI」がいよいよ小売の現場に本格化したようです。

ディスプレイのリッチ化・インタラクティブ化

f:id:vasilyjp:20190116162150j:plain *1 これまで店頭は紙などのPOPが主流であったがデジタル化が進んでいる。情報をただ見せるだけであればオンラインのストアでもできるが、その先をいくインタラクティブな見せ方のソリューションが散見されました。 実際に商品を手に取るとすぐさまディスプレイに連動して、動画が流れ商品を訴求。またスマートミラーの出展もあり、消費者が試着をするたび鏡に商品情報が表示される。それだけにとどまらず近くにある商品で次はこれが似合うと思うのでいかがですか?とレコメンドまでしてくれます。

ディスプレイの表示内容の最適化と分析

f:id:vasilyjp:20190116162202j:plain *2 f:id:vasilyjp:20190116162140j:plain インテルが展示していたディスプレイが目を引きました。ただの大きいディスプレイだと思ったがよくみるとカメラが取り付けられている。そのカメラから見てるユーザーのデモグラを推測し、また視線の動きを追尾してどの商品・モデルに興味をもっているかが把握できる。また天候や曜日なども加味しそれらの情報を逐一分析し、商品ごとのスコアリングがされている。店舗側は推すべき商品が把握出来るのに加えて、ユーザーはついつい見てしまうデジタルサイネージができるかもしれない。また画像認識とオンラインの・オフライン合わせたユーザーデータの突合が進めばユーザーごとに見せる商品の出し分けができる未来がくるかもしれないです。

ドローンによる商品確認

f:id:vasilyjp:20190116162525p:plain 店舗でドローンを飛ばして陳列棚を周遊しながら画像解析をして、商品の在庫確認ができる。商品が従来の位置になかったり・正面を向いていなくても認識ができます。それも瞬時に。例えば、高さ2m・長さ5mの商品棚であれば1分も掛からずに集計ができます。小さな店舗であれば不要かもしれないがショッピングモールやスーパーといった大型店舗になればなるほどこれまで人が随時手作業で在庫のチェックしていたものがドローンを活用することであっという間にかつ正確にできる未来がすぐそこまで来ています。

イノベーションラボ/スタートアップゾーン

f:id:vasilyjp:20190116162118j:plain またスタートアップ系の企業・サービスが集まる2018年から新設されたエリアからもいくつか気になったものをご紹介します。

Texel

f:id:vasilyjp:20190116161056j:plain 身体計測をする技術を持っているロシアの企業。3D化だけでなく、手足の長さなどの計測も可能。アプリ版(未リリース)もあり被写体を中心にアプリ(カメラ)を周囲360度を撮影することで計測が可能です。今後実用レベルまで開発が進みより多くの人が自分の正確な身体データをもてたらオンラインでもより洋服やアクセサリーが買いやすくなるので今後の開発・普及が楽しみです。

americhip

f:id:vasilyjp:20190116162056j:plain プロペラを使ったホログラムを表示する技術をもった会社。多少音が気になるが投影物がVRゴーグルを使わなくても目の前に立体的に見えます。複数のプロペラ使えば大きな表示も可能です。

caper

f:id:vasilyjp:20190116162107j:plain Amazon GOのように天井のいたるところにカメラやセンサーを設置し無人レジを実現するのに対して、こちらはスマートカートと呼ばれるカメラつきのカートを用いることでショッピング自動化を模索しています。導入コストが前述のものより低いため差別化できる。またショッピングカートに収集されたショッピングデータを陳列方式の改善や品揃えに活かす。カートに商品を入れずに売り場から立ち去った場合にどうなるか気になるものの違うアプローチでショッピング自動化を目指していて、要チェックです。

まとめ

エクスポで目立ったのが「AI/ML」をベースにしたテクノロジーの活用でした。オフラインにある情報を店頭に設置したカメラやセンサーで画像解析等を通じてデータ化。これまでの店舗全体での商品のトレンドや売上の増減ではなく、各顧客の把握にシフトしています。またオムニチャネル化を進めてオンライン・オフラインに関係なくユーザーの情報を溜めて解析をしている。アルゴリズムをもとに算出された提案をもとに商品の価格設定を柔軟に変更したり、店頭での商品説明もPOPからサイネージに切り替わることでよりインタラクティブに、そしてゆくゆくはユーザーごとに最適化した魅せ方に変わっていく。

また商品の在庫確認や物流のロボ化なども進み人の手を介さずに小売ができるようになる「無人化」関連のテクノロジーが多くみられました。これらはオペレーションの効率化といった店舗コストの削減はもちろんのこと、ここでもこれまでオフラインにしかなかったユーザーの購買情報を収集・蓄積するために進化が進んでいるといったほうがただしく流れを読み取れそうです。無人レジにすることで人件費を削減よりかは店舗でのユーザーの行動を追尾ができるようになることでデータを収集・解析しその次に商品需要の予測やレイアウトの検証をしている。小売がテクノロジーを活用して、デジタル化を進めているだけでなく複数のデータソースから予測分析をAIを用いて収益最大化を図っています。

小売業界のデジタル化やテクノロジー化を「オペレーションコスト改善」とだけ見るか、その先にある「AI活用による個別最適化の推進」と見るかで近未来の予測を読み誤ったり、戦略策定を誤ったりするので意識の転換が必要です。 もはや小売業界にもAI活用の流れは不可逆であると感じます。

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*1:シューズを手に取るとそのプロモーションビデオがすぐさま流れる

*2:黒い柱の中央にある黒い塊がカメラである

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