
はじめに
こんにちは、ECプラットフォーム部マイクロサービス戦略ブロックの半澤です。2025年11月15日(土)に「JJUG CCC 2025 Fall」が開催されました。ZOZOはブーススポンサーとして協賛し、ブースを出展しました。
JJUGは、日本におけるJava技術の向上・発展と一層の普及・活性化を目指して設立された、ボランティアメンバーで運営される日本のJavaユーザーコミュニティです。CCCは、JJUGが主催する「Javaに閉じず」「技術に閉じず」オープンソースを中心とする様々なコミュニティから参加者を募って、コミュニティを横断した「クロスコミュニティなカンファレンス」です。
ZOZOTOWNでは、かつてVBScriptによって構築されていたシステムから、段階的にJavaへの移行を進めています。現在は、カート決済基盤、ショップ直送基盤、検索基盤、基幹システムなど、多くの領域でJavaを使用しています。私たちが日々使っている技術を支えてくれているコミュニティへ貢献したいという思いから、今回はじめて協賛することになりました!
本記事では「Javaエンジニアの視点」でZOZOから登壇したセッションと気になったセッションの紹介、協賛ブースの様子や後日開催したアフターイベントについて、まとめてお伝えします。

登壇内容の紹介
今年のJJUG CCC 2025 Fallではセッションに3名が採択され、スポンサー特典LTに1名が登壇しました。採択されたセッションのうち、ZOZOでの事例を元にした2つのセッションを紹介します。
ZOZOTOWNカート決済リプレイス ── モジュラモノリスという過渡期戦略
ECプラットフォーム部マイクロサービス戦略ブロックの半澤は『ZOZOTOWNカート決済リプレイス ── モジュラモノリスという過渡期戦略』というタイトルで登壇しました。
半澤のコメント
ZOZOTOWNのカート決済システムは「カートに入れる」から「決済や注文作成」「注文履歴」まで、ECの心臓部とも言える重要な機能を担っています。絶対に止められないシステムでありながら、リプレイスの必要性は高まる一方。しかも与えられた期間は3年間という制約付きです。
20年以上かけて蓄積された11万行のコード、複雑に絡み合ったビジネスロジック、分散トランザクションで一貫性を保っているデータ。これを全社方針であるマイクロサービスに移行するには、どうすればいいのか?
悩みに悩んだ末、私たちが選んだのは「モジュラモノリス」という過渡期戦略でした。
このセッションでは、この決断に至るまでの意思決定プロセスや、モジュラモノリスの実装概要、そして実際に運用して分かったメリット・デメリットについてお話ししました。
当日はなんと満員御礼! 想像以上に大勢の方にお集まりいただき、驚きと同時に大変嬉しく思っております。協賛ブースや懇親会で質問や感想を伝えに来てくださった方もいて、モジュラモノリスへの関心の高さを改めて実感しました。少しでも皆様の参考になっていれば幸いです!

Axon Frameworkのイベントストアを独自拡張した話
ZOZOMO部OMOブロックの宮澤は、『Axon Frameworkのイベントストアを独自拡張した話』というタイトルで登壇しました。
宮澤のコメント
Axon FrameworkはJavaにおけるCQRS+ESの主要フレームワークの1つです。本セッションでは、CQRS+ESの基本知識に加え、フレームワークのイベントストアを独自拡張し、Amazon DynamoDBをイベントストアとして用いる方法を解説しました。
フレームワークを利用するメリットは認知負荷を抑え、コード品質を保つことができる点にあります。一方で、フレームワークが標準提供するサービス選定では、運用体制やシステム要件に適合しない場合があり、制約が生じることもあります。
本セッションでは、独自拡張によってこうした制約を解消し、フレームワークの恩恵を活かしながら、実際のシステム要件や運用体制に沿ったサービス選定を実現した事例をご紹介しました。
専門的でやや尖った内容ではありましたが、多くの方にご参加いただき大変嬉しく思います。少しでも皆様の参考になれば幸いです!
speakerdeck.com

Javaエンジニアが気になったセッションの紹介
ZOZOのJavaエンジニアが気になったセッションをいくつか紹介します。
Javaコミュニティへの参加から貢献まで、すべて教えます
商品基盤部の商品基盤1ブロックの井草です。杉山貴章(@zinbe)さんと田端大志(@tbtdis)さんの『Javaコミュニティへの参加から貢献まで、すべて教えます』を紹介します。
JJUG幹事の杉山さんによるセッションは、ユーモアあふれる“杉山節”全開で、会場が笑いと温かさに包まれました。
冒頭では元Sun Microsystemsのジョン・ゲージ氏の言葉「Don't be shy(恥ずかしがらずに)」を引用。杉山さんが何度か発言されており、Javaコミュニティ活動の根底にある精神を感じさせます。このセッションは杉山さんの魔法がかかっていて、セッション終了後は、自分はJJUGのメンバーであり、同じJJUGメンバーの顔見知りの知り合いが一人増えている状態になります。
続いて、JavaコミュニティとJJUG(Japan Java User Group)の概要紹介へ。
2025年春のJJUG CCCには約700名が来場し、日本最大規模のJavaイベントとしての存在感を見せました。
さらに今年、新たに「CCC協会」という非営利法人を設立。これにより、運営体制が強化され、コミュニティ活動の継続的な支援が可能になったとのことです。JJUGが次のフェーズへ進んでいる印象を受けました。
続いて登壇した富士通の田端さんは、自身のキャリアとコミュニティ活動の関わりについて熱意をもって語りました。
印象的だったのは、「海外カンファレンスへの参加で人生が変わった」という話です。初めてJEPに参加し、サンフランシスコでカニを食べたその日から日本のJava界隈の有名人と顔見知りになったというエピソードも印象的でした。「自ら飛び込めば、その先には思いがけない出会いやチャンスがある」とのメッセージが心に響きました。
今回の登壇も、ベルギーの「Devoxx」で杉山さんと行動を共にした際に、その場で登壇を勧められたことがきっかけだったそうです。まさに「飛び込んだ先で次の扉が開く」ことを体現したエピソードでした。
両登壇者に共通していたのは、「行動すること」「つながること」の重要性です。Javaという技術を軸に、人とのつながりを通じて成長とキャリアの広がりを得ることの大切さを感じました。
TestcontainersのReusable Containersを使った、リポジトリテストの高速化
ZOZOMO部OMOブロックの木目沢です。Rentaro Moriさんの『TestcontainersのReusable Containersを使った、リポジトリテストの高速化』について紹介します。
UnitTestでリポジトリのテスト、特にRDBを扱うような副作用のあるテストをどこまで行うべきかは、どのチームも迷うところではないでしょうか?
テストする場合にネックとなるのは、テストデータの問題とかかる時間の問題だと思います。セッションのテーマでもあったTestcontainersのReusable Containersを利用することはその解決策の1つとして検討してもよいのかなと感じました。
この機能はいわゆるテスト実行時にDBコンテナを立ち上げたままにしておいて、コンテナの起動や停止の処理時間を削減するというものです。確かに立ち上げたままにして、DBのDDLとデータの調整だけできれば実際のDBを用いたテストは可能だと感じました。
AI駆動開発の最前線:GitHub Copilot Agent ModeとCoding Agentで実現する高速マイクロサービス開発
ZOZOTOWN開発本部 バックエンドリプレイスブロックの平林です。てらだよしお(@yoshioterada)さんの『AI駆動開発の最前線:GitHub Copilot Agent ModeとCoding Agentで実現する高速マイクロサービス開発』について紹介します。
AI Agentを使った開発の限界まで挑戦した話と、その際に気づいた点などをお話しいただきました。まさにAI駆動開発の最前線という感じで、生成AIをつかった開発速度の上限を目指した話が印象的でした。
5段階に分けてSpecを定義する、毎回Agent側にセルフレビューを強制するなど、実際に高速で開発を回したことによる、生きた知見を共有いただき大変参考になりました。
ZOZOブースの紹介
協賛ブースでは、Javaエンジニアを中心として多数のZOZOスタッフが入れ替わりながらブースに立っていました。

技術パネル
JJUG CCC用に「Javaを使用しているZOZOTOWNのアーキテクチャ」パネルを作成し、展示しました。このパネルをきっかけにブースの前で足を止めてくださる方も多く、アーキテクチャの設計思想や登壇内容についてのご質問、意見交換などさせていただき、貴重な交流の機会となりました。


JJUG CCCの楽しい思い出を残そう! 企画
今回、ZOZOブースにて「JJUG CCCの楽しい思い出を残そう!」をテーマに、参加者のみなさんがJavaへの思いを形にできる企画を実施しました!
参加者の皆さんに「Javaの好きなところ」というお題で、ホワイトボードに自由にJavaへの想いを書いていただき、チェキ写真をその場でプレゼント。ZOZOが大切にしている価値観の1つ「愛」をテーマに、Javaへの愛を通じてエンジニア同士が共感できる場を作りたいという想いから企画しました。

企画に参加してくださった方には、今回のために作成した特別な「ギターマンステッカー」もプレゼントしました。このステッカーはZOZOTOWNで表示されるローディングアニメーションをもとにデザインしており、角度を変えるとキャラクターが動いて見えるレンチキュラーステッカーになっています。

「Javaの好きなところ」集計結果
集まった回答をカテゴリごとに分けて分析したところ、Javaコミュニティの愛が詰まった素敵な結果となりました。Javaコミュニティを牽引される方々からの回答も合わせて、多かった順にご紹介します!
1位:型・コンパイルなどの言語仕様系(16件)
圧倒的1位は、やはりJavaの言語仕様に関する回答でした!
- 「型安全♡」「静的型付け」といったシンプルな回答から
- 「コンパイル時に沢山怒ってくれる♡」という愛情あふれる表現まで
- 「メソッドチェーンで書けるところ。ストリーム処理♡」
- 新機能への期待も:「switch式」「レコード型」
- そして伝統的な「public static void main()」への愛も!

ズバリJavaらしさを端的に表している「型」というJJUG幹事のまーやさんからの回答。Javaの強い型システムは、コンパイル時に間違いを早期に検出してくれる安心感があり、特に大規模なチーム開発で威力を発揮します!


増田さんからは、深いプログラミングモデルの話が聞けました。
まず「振るまいを持つenum」ですが、Javaのenumは単なる定数の集まりではなく、振る舞い(メソッド)を持てる点が特徴的です。状態遷移のロジックやビジネスルールをenumに閉じ込めることで、if文やswitch文が散らばらず、ドメイン駆動設計とも相性の良い設計が可能になります。
さらに「class only baseのプログラミングモデル」と「mutable huge objects → immutable small objects」は、Project Valhallaで目指されている方向性、特にValue Class(現在Early Access段階の機能)への言及です。
従来のJavaでは全てのクラスがidentityを持っていましたが、Value Classはidentityを持たないイミュータブルなクラスです。identityがないため、==演算子は参照の同一性ではなくフィールドの値の等価性を比較するようになります。
また、JVMはヒープ平坦化などの最適化によって小さな不変オブジェクトをより効率的に扱え、キャッシュミス低減などメモリ効率の向上が期待されています。
こうした最先端の話を楽しそうにスラスラと話す増田さんを見て、改めて尊敬の念を抱きました!
この場を見ていた商品基盤部の井草からのコメント
イベントの面白さは、想定していなかった対話が生まれるところにあります。JJUG CCC 2025 FallのZOZOブースでは、そんな“化学反応”が起きました。
増田亨さんがJavaをテーマに語る姿を、ZOZOのエンジニアたちが真剣に見つめていました。そこでは、ただ知識が伝わるのではなく、“思い”が共有されていました。
伝える人には、伝えたい熱がある。聞く人には、知りたいという好奇心がある。その交差点に立てるのが、イベントブースの醍醐味だと思います。

2位:エコシステム・ツール・ライブラリ(11件)
充実したエコシステムもJavaの大きな魅力のようです!
- 「Spring Bootのエコシステム」
- 「gradle」などのツール
- 「標準ライブラリが豊富」「資産がたくさんある」
- 「充実したリファレンス」
長年の蓄積による豊富なライブラリやツールが、開発を強力にサポートしてくれることへの感謝の声が多数寄せられました。

今回はありませんでしたが、Javaチャンピオンの谷本さんがこれまでのJJUG CCCで行っていたアンカンファレンスは、いつも楽しみなコーナーの1つでした。
新人教育、資格の必要性、OR Mapper、AI活用など、Javaを取り巻く様々なテーマについて参加者と語り合う場で、エコシステム全体を見渡している谷本さんならではの企画だと感じていました。
エコシステムの重要性は、VBScriptからJavaへ移行を進めているZOZOにとっても、改めて実感している部分です。Javaを中心に多くの人が繋がって助け合うこの仕組みを、今後は支える側として、OSS貢献やコミュニティ活動を通じて盛り上げていきたいと考えています!
3位:歴史・スタンダード性(8件)
Javaのスタンダード性も高く評価されています!
- 「Theスタンダード」
- 「みんなが使ってる!」「みんな使ったことある!」
- 「一番使っている、使われている」
- 「歴史があるところ」「歴史」
多くの人が使っているからこその安心感、そして情報の見つけやすさが魅力ですね。
4位:使っていて楽しい・愛着・個人的なつながり(7件)
技術的な側面だけでなく、感情的なつながりも大切にされています!
- 「仕事でも遊びでも使っている所」
- 「書いてて楽しい ビルドの実感 フィードバック」
そして何より心に響いたのが、Javaコミュニティを長年牽引されている方々からいただいたこちらの回答です。



運よく、ブースでJavaチャンピオンのお二人が回答を書かれるシーンを目撃しました。お二人とも「Javaの好きなところ? うーん…」と熟考されていたのが印象的でした。すぐに答えが出てくるものと思っていた分、その様子に少し驚かされました。
そして書かれたのが、「Java = 人生」という内容でした。
JJUG幹事の杉山さん含め御三方が長年にわたってJavaコミュニティを支え続けてこられたのは、Javaそのものへの深い愛があったからこそ。
「私の人生そのもの!!」「No Java, No Life」「Javaと共に生きてきたので」という言葉に、その想いが凝縮されていると感じました!
5位:JVM・プラットフォーム特性(6件)
JVMの力も見逃せません!
- 「30億のデバイスで走るところ」
- 「JVMがあれば動く!」
- 「JVM 愛♡」
- 「Write Once, Run Anywhere」
同率6位:複数のカテゴリが4件ずつ
コミュニティ・人・文化
- 「コミュニティがあたたかい♡」
- 「師匠が熱く語ってくれること!」

Javaデベロッパがいつでも集える場所として、Javaチャンピオンのユースケさんが2021年に開設されたDiscordサーバ「#Javaディスコ」には個人的に大変お世話になっています。毎晩入り浸り、技術書を読んだり、Javaの質問をさせてもらったりと、本当にありがたい場所です。
実際にコミュニティの場を作り、日々大切に育てているユースケさんならではの回答だと感じます!
後方互換性
- 「後方互換がちゃんとしてる所!!」
進化
- 「常に進化している」
- 「古いけど新しい♡」
- 「10年先にも必ずある」
- 「歴史があるのにどんどん進化していくところ」
個人的には、「10年先にも必ずある」という回答が特に刺さりました!
長年使われてきたVBScriptからJavaへリプレイスを進めているZOZOとしては、技術選定における長期的な安定性という観点で、非常に重要な点だと感じています。
9位:マスコット愛(2件)
- 「Dukeがかわいい!」
- 「デュークがかわいい」
マスコットキャラクターDukeも人気です! 今回の協賛のために、ZOZOもオリジナルステッカーを作成してブースで配布しました。

その他にも「べつに嫌いじゃないぞ! null!!」など個性的な回答が寄せられました!こうした愛情たっぷりのコメントも、Javaコミュニティの温かさを物語っていますね。
今回のアンケートを通じて、型安全やエコシステムといった技術的な強みはもちろん、コミュニティの温かさや長年培われてきた信頼や「楽しい」「かわいい」といった感情的な繋がりまで、多角的にJavaが愛されていることが分かりました。
著名な方々も一般参加者も、分け隔てなく交流し、知識や想いを共有し合える。そんなフラットで温かいコミュニティの雰囲気こそが、JJUG CCCというイベントの素晴らしさだと感じました!
ご回答いただいた皆さん、ありがとうございました!
アフターイベント
今年はLINEヤフー、出前館、ZOZOの3社で After JJUG CCC 2025 Fall を開催しました!
JJUG CCCの懇親会の延長のような和やかな雰囲気の中、各社から1名ずつShort Talkを行い、その後3名によるパネルディスカッションを実施しました。
ZOZOからのShort Talkは、ZOZOMO部OMOブロックの木目沢が『意外と難しいドメイン駆動設計の話』というタイトルで発表しました。
パネルディスカッションには、LINEヤフーのきしだなおきさん、出前館の神保宏和さん、ZOZOの宮澤碧の3名が参加し、「JJUG CCCの振り返り」や「JavaとAI」をテーマに各社での取り組みから個人的な取り組みまで語っていただきました。

少人数ならではの距離感で、参加者同士がじっくり交流できる楽しい時間となりました。
おわりに
今回のJJUG CCC 2025 Fallを通じて、開催前からアフターイベントまで、とても充実した時間を過ごすことができました。
ブースやセッション、アフターイベントで交流してくださった皆さん、本当にありがとうございました。これからも一緒に楽しみながらコミュニティを盛り上げていけたら嬉しいです。次のJJUG CCCでもぜひお会いしましょう!

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