はじめに
こんにちは、ZOZOTOWN開発本部でZOZOTOWN iOSアプリを開発している松井です。
ZOZOでは、お客様がファッションを心から楽しむことができるよう、日々さまざまな新規案件に取り組んでいます。最近では、ZOZOTOWNの全体的な大幅リニューアルや、ZOZOGLASSのリリースなどが記憶に新しいのではないでしょうか。まだ試していない方はぜひ使ってみてください!
新規の開発案件だけではなく、お客様が使いやすいアプリをリリースし続けていくために取り組むべきことがあります。それは既存のアプリを見直し、お客様の声に耳を傾けたり、数値を見たりしてより良くしていく活動です。 その活動の一環として、毎週行われるアプリ部の定例で誰でも改善提案をできる時間がとられています。提案書のフォーマットも用意されており、社員の意見を積極的に取り入れようとする仕組みが整っています。そのため、社員の意見をスピーディに上へあげることが可能です。多くの社員がZOZOTOWNの改善に取り組んでいる中で、iOSチームでも「改善できるところを見つけ、提案・開発・計測をしていくプロジェクト」を実践しています。
本記事では、そのプロジェクトにおいて限られたリソースの中でどのように課題を見極め改善提案を行っているか、その工夫点と成果をお伝えします。
ボトムアップで改善提案を行う理由
いきなりですが、エンジニアが売上貢献するにはどんな道があるでしょうか。まず最初に思いつくのは、会社の企画部署や上層部が意思決定した新規開発をガンガン進めるという道です。しかし、それ以外にもエンジニアが売上貢献できる道はありそうです。
大きなインパクトを与える新規案件の開発だけに集中してしまうと、お客様がアプリを使っていて感じる不満や改善点が取りこぼされていきます。しかし、iOSチームという小さなスコープで取り組むことによって、そうした小さな部分にも目を向けることができます。わたしたちは数値データだけでなく、お客様からの問い合わせの声にもひとつひとつ目を通しています。そこから課題を見つけ、改善提案をすることでお客様により良い体験を提供するよう努めています。そのような小さな改善の積み上げによってお客様の体験を向上させることは、ZOZOTOWNに愛着を持って長く使い続けてもらうことに繋がり、結果として売上にも貢献すると考えています。
小さな改善への取り組み方
実際に、上記の流れで取り組んでいます。
課題を明確にし、原因を分析、データを元に仮説を立てて、提案する。
特に目新しいことはしていないことに気付くでしょう。流れとしては一般的ですが、その中でも「課題の深掘り」と「調査結果を元に仮説を立てる」に特に注力しています。
課題の深掘り
課題が発見されたら、すぐに解決策のアイデアを出したくなります。本記事に興味のある読者の方は、特に改善というキーワードに感度が高く、賛同いただける方も多いでしょう。普段アプリを使っていて「ここ改善したいな」と思うところは容易にいくつも思いつくのではないでしょうか。わたしたちもそうでした。しかし、それを片っ端から改善していく訳にもいきません。わたしたちは「改善提案専門部隊」ではありません。他の案件も並行で進めながら、サービスに寄与する効果をあげる必要があります。課題を思いついたときに、それが本質的な課題なのか深掘ることで、限られたリソースで最大の効果を発揮できる選択が可能になります。
1つ具体例を交えてお話します。「お気に入り画面にカートボタンを置く」という改善提案についてです。なお、この施策は既にリリースされ、数値の改善も見られたため、詳細は事例紹介として後述します。
改善前は、お気に入り画面で、特定の商品の値段部分をタップするとその商品をカートに投入できました。しかし、「値段をタップしたら商品がカートに投入される」という挙動は、お客様が想定することは難しいでしょう。多くのお客様は、その挙動に気付くことができません。「お気に入り画面から直接カートに入れる機能が気付きにくい」という課題が出てきたことで、「じゃあ、気付かれるようにしよう!」というアプローチのアイデアを出したくなります。しかし、そのアプローチは本当に正しいのでしょうか。もしかしたら、そのアプローチが間違っていることもあるでしょう。実はこの機能自体に需要がなく、そもそも無くしても良いものかもしれません。その場合、気付かれるようにしたところでユーザー体験は向上しません。改善案のリリース後、確度高く結果を得るためにも、実装前に一度思いついた課題を深掘ることを仕組み化することが重要です。 そこで、「そもそもこの機能に気付いて使っているお客様はどれくらいいるのか」「機能自体、本当に必要なのか」「どの画面からのカート投入率が高いのか」を、Google Analyticsを使って集計しました。必要な数値が収集できていない場合は、A/Bテストを実施するのもひとつの手です。その結果、想定よりも使っているお客様が多く、必要な機能だということがわかりました。しかし、そもそも気付きにくいという課題は依然として残るので、「わかりやすくする」ことで必要なお客様にもっと使っていただけるであろうという仮説のもと、「カートに入れる」と明記する提案をしました。
なお、冒頭で「改善提案をすることで売上貢献する」という話をしました。「この改善は他の画面からのカート投入率を奪うものであって、本質的にはカート投入率が増える改善ではないのでは」と思った方もいるかもしれません。この点は、ユーザビリティを良くしていくことにより、「ZOZOTOWNは使いやすいからまた使おう」と思ってもらえる機会を増やしていき、結果として売上拡大に貢献できるような仕組みです。
調査結果を元に仮説を立てる
「仮説を立てる」ことにこだわることで、説得力が高まり、アイデアが案件として採用されやすくなります。また、仮説を立てられるかどうかによって、取り組むべき課題のフィルター効果が期待できます。仮説を立てようとすると、その仮説を担保するだけの根拠が必要になります。そのため、提案に説得力が生まれ、仮説を検証するための有効な課題解決策がおのずと湧いてきます。逆に仮説が立てられないのであれば、設定している課題が間違っている可能性があります。その場合は、課題の深掘りサイクルに戻り、本質的な課題は何であったかを見直します。改善提案だけに時間を割ける環境ではないことがほとんどだと思うので、少ない時間で最大限の改善をするためにも、「仮説を立てることができるか」という視点を大事にしています。
チーム内レビュー
提案書を作成したあとに、iOSチーム内でレビューの時間を必ず設けています。この段階で根拠が足りていなかった点や他に解決できそうなアイデアがないか、など意見をもらっています。上に提案を持っていく前に複数人の目を通すことで、新たな気付きを得られることも多く、より筋の通った改善提案にブラッシュアップできます。
取り組みの流れは以上です。エンジニアからも売上に貢献することは充分に可能ですし、エンジニアの視点だからこそ気付く部分や、出てくるアイデアもあります。改善提案を行う上で、少しでも参考になる部分があれば幸いです。
事例紹介
さいごに、上記の取り組みを全て改善提案のフローに適用し、リリースまで行った案件をご紹介します。他にもいくつもの提案がありますが、本記事では2つ具体例として挙げます。
お気に入り画面にカートボタンを置くことでカート投入率が向上
カートボタンの設置に伴い、値段部分のタップでカートに入れられる導線は削除しています。お気に入り画面からのカート投入率の計測によって、検証をしました。その結果、リリース直後から数値が向上したことから、この機能の存在に気付き、使っていただけるお客様が増えたと言えます。
ホーム画面のモジュールを2段表示にすることで商品詳細画面への遷移率が向上
ホーム画面から商品詳細画面への遷移率を向上させるための改善です。
商品詳細画面への遷移率を上げるということは、お客様に商品のお気に入りや、カートへ入れてもらう機会を増やすことに直結します。例えば実店舗だとしても、まず服を手にとって見てもらうことが大事になってきますよね。こちらはA/Bテストでの検証の結果、正式にリリースすることとなりました。Androidアプリでは先行して既にリリースされており、iOSアプリも現在開発中です。 # おわりに 本記事では、iOSエンジニアが主体的に行っている改善提案のフローをご紹介しました。こうした改善にも興味あるよという方は、ぜひ面談してみませんか。ZOZOでは、これからもこうした活動を通してお客様により良い体験を提供し、売上の最大化を目指すことでサービスにとってプラスとなるよう努めていきます。 ZOZOではiOSエンジニアを大募集中ですのでご興味のある方はこちらからご応募ください。