はじめに
BtoB開発部の増田です。
2020年4月1日より、株式会社アラタナからZOZOグループへの吸収統合を経て、ZOZOテクノロジーズ/BtoB開発部として新たなキャリアをスタートすることになりました。これまで同様、九州・宮崎にオフィスを構えており、現在約30名のエンジニアで開発を行っています。ZOZOグループの成長に貢献できるような拠点拡大を目指していきますので、よろしくお願いします!
今回、アラタナ時代にたくさんのブランドさまとともに歩んできたプロジェクト経験をもとに、プロジェクト管理の要点をまとめてみました。大規模なプロジェクトを管理していくためのヒントになれば幸いです。
プロジェクトの特徴
BtoB事業について
ZOZOグループでは、メイン事業となるZOZOTOWNのサービス開発に加えて、ZOZOTOWN出店ブランドさまの自社ECシステムの開発支援、運用支援を行うBtoB事業を展開してきました。現在では、ZOZOTOWNと自社ECとで在庫を一元管理するための物流支援サービス「Fulfillment by ZOZO」を中心としたサービス開発を通して、ブランドさまの支援を行っています。
BtoB事業の大規模プロジェクト
BtoB事業では、大小さまざまなプロジェクトを推し進めてきました。特に下記のような大規模プロジェクトは管理や進行の難易度が高くなります。ですが難易度が高い分、多くの気付きや知見、経験を得ることができます。今回は、BtoB事業で直面した下記のような大規模プロジェクトに焦点を当てて、特に気をつけているポイントをまとめてみます。
- 期間が1年以上の長期間に及ぶ
- 社内の複数部署だけでなく社外の多数のベンダーとも連携する
- システム改修の影響がブランドさまの特定部署だけでなく全体横断的に影響がある
プロジェクト管理の要点
要点(1)全体像の整理
プロジェクト初期の段階で全体像をうまく整理できるかどうかは、その後の進行に大きく影響します。
特に、下記の3点は、プロジェクトの全体地図に相当するものです。プロジェクトの全体イメージを関係者全体に共有できるように、簡潔な形で可視化しておきます。プロジェクトに関与していないメンバーでも概要を把握できるような、わかりやすい説明資料を目指して作成します。
- 目的、納期、予算、要件一覧などをまとめた「プロジェクト定義書」
- 関係するシステム要素の相関関係を網羅的にまとめた「システム俯瞰図」
- 関連各社、各部門のキーパーソンをまとめた「プロジェクト体制表」
プロジェクト定義書
プロジェクトの目的をはじめとして、納期、予算や要件一覧などプロジェクトの大前提となることをまとめます。特にプロジェクトの目的は、進行過程でそもそも論が浮上したときに、原点に立ち戻るための指針です。プロジェクトを通して何を達成すべきかを正しく理解して、全体に共有しておく必要があります。
- ✕✕✕ツールの導入
- ◯年◯月までのECシステムリプレース
のような表現だと目的の本質が伝わりません。
- 各セール企画の効果測定を高精度化し販促強化するために、✕✕✕ツールを導入しデータ分析の粒度を詳細化する
- 複雑化したEC運用を効率化するために、◯年◯月までにECシステムをリプレースし単一システムでのEC運用を可能にする
のように具体的な目的を表現しておきます。
システム俯瞰図
プロジェクトに関連する登場人物(システム構成要素)を俯瞰的に配置します。
要素の洗い出しのためには、ブランドさまや関連ベンダー各社へのヒアリングを何度も重ねることになります。一見、プロジェクトとは無関係に思える構成要素が登場しても、ヒアリング過程で話題に上がったものは念のため俯瞰図には落とし込んでおきます。そうすることで、ヒアリングでの見落としを後の設計フェーズで発見しやすくなります。
俯瞰図を整理していく過程では、ブランドさまの運用の歴史的背景や将来設計を知ることができたり、ベンダーから提供されるサービスの仕様や開発スタイルを学ぶ機会があったりします。こうした社外との接点を多く持てるのは、BtoBプロジェクトの魅力のひとつです。
プロジェクト体制表
プロジェクトをともにする各社の担当者、キーパーソンを一覧化しておきます。
このとき、整理の区分を会社や組織の単位で分けてしまうと、体制表というよりも連絡表のような性質のものになってしまいます。互いに関連し合う担当者がわかりやすいように、プロジェクトを分割するテーマ単位で整理するようにします。そのうえで、各テーマの進捗管理や状況報告を担当する責任者を明確にしておきます。
要点(2)スケジュールの管理
プロジェクトの成否をもっとも左右するスケジュール管理。
唐突かつ抽象的に問われる「順調?」に対して、簡潔にズバッと回答できる状態を常に作っておきたいと、心から思います。BtoBの大規模プロジェクトでは、下記3つの粒度でスケジュールを管理しています。
- 長期スケジュールの全体像を月単位の粒度で俯瞰する「大日程表」
- ブランドさま含む関連各社の計画を週単位の粒度で確認する「中日程表」
- ブランドさま含む関連各社のタスクと進捗を1日単位で確認する「詳細日程表」
大日程表
プロジェクト全体のスケジュールを、月単位の粒度で表現したものです。
プロジェクトの初期段階で、各社のスケジュール感を可視化したり、開発スケジュールを詳細化するためのたたき台として利用します。細かなタスクの内容よりも、各月でプロジェクトはどんな作業をするフェーズになるのかを整理するための俯瞰資料になります。
中日程表
プロジェクトの関連各社の計画を、週単位の粒度で表現したものです。
各社のタスクをある程度細分化し、各社がどの時期にどんな作業をする計画になるかを可視化します。他社タスクとの関連や依存関係もここで表現しておき、着手に必要な先行タスクはどんなものがあるのかを把握できるようにします。
また、プロジェクトの進行フェーズに入ると、事前に予期できなかった課題が顕在化してきます。場合によっては計画の軌道修正が必要になることもあります。軌道修正によって後続の計画にどんな影響が発生するか、軌道修正の影響はリカバリー可能なものなのかを判断する際に、中日程表は有効です。
詳細日程表
プロジェクトの関連各社の計画を、もっとも細かい粒度に整理し1日単位の粒度で表現したものです。
進捗状況を実質的に評価するのは、詳細日程表(WBS/ガントチャート)です。各社の足並みを中日程表で俯瞰し、タスクレベルでの進捗が先行気味なのか遅延気味なのかをガントチャートで追跡します。
長期的なプロジェクトのタスクを事前にすべてリストアップしておくのは実質的には不可能です。ですが、中日程表に基づいて想定されるタスクを事前に細かく整理しておくことは、計画リスクの事前検知に有効です。各社と協調しながら、スケジュールを整理するとともに、各社動向の具体的な内容を詳細に理解していきます。
大規模プロジェクトでは、膨大なタスク量に圧倒される局面もあります。ですが、各社一体となって着実に実績を積み上げ目的を達成できた瞬間は、大きな達成感を実感できます。こうした日常では得難い達成感を多くの関係者と共有できるのも、BtoBプロジェクトの魅力のひとつです。
要点(3)プロジェクトチームのコミュニケーション
最後に、プロジェクトメンバーのコミュニケーションについてです。
大規模プロジェクトではミーティング参加者も多くなりやすいので、議論や合意形成が簡単に進まないこともあります。特に最近ではリモート形式でのミーティングが中心なったことで難易度が上がっており、対面で直接会話する以上にコミュニケーションでの想像力が要求されます。
- いま伝えたことはちゃんと伝わったか
- いま伝えたことに何を感じているのか
- 質問の背景にはどんな意図や懸念があるのか
- いま議論になっている課題の本質はどんなことか
など、相手の状況を想像しながら対話に配慮する必要があります。
定例的なミーティングでも事務的・義務的な場にするのではなく、人同士の大切なコミュニケーションの場と捉え、丁寧なコミュニケーションを関係者全員に対して心がけておくのが重要です。
- 感謝は最大限に伝える
- お願い事では必ず背景まで丁寧に伝える
- どんな質問にも真摯に答える
そうしたことを積み重ねながら苦楽をともにしていくことで、プロジェクト終了後にも継続して交流を続けられるような協力関係を築くことができるのは、BtoBプロジェクトの魅力のひとつです。
まとめ
以上、BtoB事業の大規模プロジェクトにおける管理観点を簡単にまとめました。
全体像にしても、スケジュールにしても、全体概要から部分詳細化の流れでの情報整理を意識しています。開発を分担していただく関連各社が、システムの全体像や開発スケジュールの全体方針を把握した上で各社領域の開発を進めていけるような情報共有を行っています。
ZOZOテクノロジーズでは、BtoB事業の拡大に取り組んでいただけるエンジニアを絶賛募集中です。ブランドさまと近いプロジェクトに従事したい方、ブランドさまの課題や要望を一緒に考えながら開発に取り組みたい方、九州・宮崎でお仕事したい方など、ご興味ある方はこちらからぜひご応募ください!