組織拡大に伴うスケールアウトするTV会議需要をCisco Webexで構築したはなし

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組織拡大に伴うスケールアウトするTV会議需要をCisco Webexで構築したはなし

こんにちは、ZOZOテクノロジーズ コーポレートエンジニアリング 伊藤琢巳です。 社内のTV会議システムをWebexにて構築しているのですが、昨今のリモートワークなどTV会議需要を検討されている方々に1つでも有益な情報を提供できたら幸いです。

課題

株式会社ZOZOは千葉市の海浜幕張に拠点を構えており、幕張周辺に住む社員が多く通勤時間も短く、開発チームはオフィスで直接コミュニケーションを取れる事が強味です。そして、株式会社ZOZOテクノロジーズの設立により拠点が幕張オフィスと青山オフィスに分かれ開発メンバーも分散しました。

青山オフィス竣工時には既に拠点間会議を行う準備としてTV会議機器を導入した会議室が整備されていました。幕張オフィスにはCisco TelePresence TX9000、青山オフィスにはCisco TelePresence SX20を導入しました。

その後、福岡にも福岡研究所として新しい拠点が稼働しはじめ、以下の課題に直面しました。そのため、スケールアウト可能な遠隔コミュニケーション構築が急務でした。

  • PCで行うTV会議ではカメラ・マイクの性能不足のため、機微なコミュニケーションが伝わりにくい機器の品質課題
    • デスクトップPCの比率が高く会議時にPCを会議に持ち込めないメンバーも存在していた
  • チーム数が多く、会議室が不足して利用できないという場所の課題
    • TV会議システムを導入している会議室と導入していない会議室の2種類あるが、会議室の空き状況的にTV会議が不要な会議でもシステム導入済みの会議室を利用せざるを得ず、TV会議システムの稼働率が低かった
  • 開発現場が利用しているTV会議システムの機器と全社で導入しているTV会議システムの機器の相互接続性の課題
    • 利用しているプロトコルの違いから接続不可の状態だった
  • 福岡研究所をはじめ日帰りで往復移動できない距離の拠点の増加によるTV会議増加の課題
    • 拠点間でのコミュニケーションが増加し、TV会議需要が増加した

解決過程

以下では、上記の課題を踏まえ、どのように解決に向けて進めていったのかを説明します。

課題の解決法検討

先述の課題に関して、それぞれの解決方法を検討していきます。

品質の課題解決

それまでは、PC会議としてSkype for BusinessやZoomを利用していました。どころがデスクトップPCの利用者比率の高さや、ノートPCの利用者でも内蔵カメラ・マイクの品質では力不足です。

これらの課題を解決するためにCiscoの導入を検討しました。Ciscoでは参加人数に合わせた製品がそれぞれ用意されていたため、会議室スペースのサイズや用途に合わせて選択が可能でした。

場所の課題解決

各拠点に設置するCisco TelePresence端末(以後、TV会議機器)を適切な台数追加しました。現在、65台のTV会議機器が稼働中です。

相互接続性の課題解決

相互接続性の課題解決に向けて、大きく2つの方向性を検討しました。

まず、社内で利用が浸透し始めていたZoomでの構築を検討しました。これには社内外接続の際にバーチャルルームコネクタ構築が必要です。また、拠点の増加を踏まえた運用やスケールアウト面で断念しました。

次に、ポリコムやソニーなどその他のTV会議システムの検討をしました。先行導入していた高価なTV会議機器を活かす必要性がありました。相互互換性のため業界標準のH.323/SIP接続は必須で検討しました。

TV会議増加による管理の課題解決

拠点増によりTV会議を構築する初期設定から障害調査などの運用の際の考慮はが必要です。また、拠点増により1つの会議への同時接続数が増えるため、多地点接続オプションはも必須。そのため、端末を増やすにあたり検討した内容は以下の点があげられます。

  • TV会議機器は多地点接続を行うには上位グレードの高価な機器が必要となる
    • 多地点オプション導入しても同時接続数は数接続程度
  • TV会議機器の管理には専用のサーバ群とネットワーク構築の維持管理が必要となる
    • 社内外との相互接続を行うためのExpressway設置や接続ライセンス管理が必要
    • 広帯域かつ低遅延ネットワークの構築と維持が必要

Webexの選択

検討の結果、Webexを選択しました。Webexにてどのように課題解決したのか説明します。

管理コストの削減

多地点対応検討した時の図
オンプレミスクラウド
20200512204203 20200512204145

上で示す図のように、オンプレミス環境で構築した場合TV会議機器のみではなく、相互接続するためのサーバ群の構築が必要となります。

そこへクラウド環境を導入することにより、TV会議機器はクラウドへ直接接続になり、ネットワークへ接続してアクティベーションコードの入力だけで機器の接続が完了できるようになります。

クラウド環境への移行でサーバ保守が不要により、サービス提供に注力できます。

外部ともTV会議可能な環境整備

登録された端末は外部公開されるSIPアドレス割当により、内線的な組織内接続のみでなく外部との接続も行うことが可能。グループ各社Webexを導入することでお互いの会議室SIPを登録しておくことで会議室を直接呼び出し可能。グループで契約統合した際にも各社Webexを採用していたため移行はとてもスムーズに完了。

クラウド会議室はTV会議機器のみではなくPC・モバイルアプリ、ブラウザからのアクセスも可能なため専用機器を持っていない外部のゲストの方とも会議可能です。

Zoomとの相互接続

H.323/SIPルームコネクタオプションを利用してWebexと相互接続性を維持。

Google hangout meetとの相互接続

メディア変換サービスであるPexip構築の試算。Google hangout meetとの相互での同時接続を増やすとミスマッチになり断念。

PC会議として利用にとどめ、品質対策として数名で会議を行いたい場合にWebカメラの貸し出しや会議マイクスピーカの貸し出しを実施。また、Cisco Room Kit MiniをUSB接続することでPC会議でも品質を高めるこ方法を準備しています。

どこでもTV会議可能な環境整備

クラウド会議の開催はどのTV会議端末、アプリ、ブラウザからでも主催をすることが可能。オンプレミスでは必要だった高価な多地点オプションが不要。

用途に適した機器の選定

狭い会議室、広い会議室、オープンスペースと用途に合わせた機器選定を行う場合には、多地点オプションのために上位機種を選択は不要になり機器選択の自由度向上。そのため多くの会議室へ設置が可能となり、会議室利用の均等化を促進。

導入効果

接続拠点
※3カ国/11拠点/65台(2020/05現在)
国内海外
20200512204211 20200512205009

幕張・青山間であっても日に2往復は現実的でない距離。福岡や宮崎に至ると往復は現実的でなく、日程調整は高コストになりました。 会議室間の高品位なCiscoの相互接続は拠点間の移動頻度を削減。

他拠点間での会議参加があっても、他メンバーとのコミュニケーションが可能です。

これは実際の移動による交通費だけでなく移動時間の削減による無理のない業務が可能。別拠点からでもコミュニケーションコストが下がることで心理的な安全性を確保。

設置したTV会議機器の紹介

DX80

DX80

Cisco Webex DX80を可搬式スタンド化しています。主にオフィス内で発生する必要なときに短時間で行うミーティングを拠点間でも実現させる目的で設置しており、予約制にはせずミーティングスペースへ数台設置しています。

可搬式スタンド化することで誰でも容易に移動が可能です。

狭いスペースでも利用が可能なため好評であり、会議室に設置済DX80もすべてこの仕様へ変更しました。

Room Kit Mini

Room Kit Mini

参加メンバーが増えてくると特に問題になるのはマイクの性能不足です。前述のDX80は個人デスクで利用するサブモニタ的な扱いの製品でしたが、こちらのRoom Kit Miniはカメラ・マイク・スピーカをハドル利用できるように強化しています。

こちらも自立式の構成なため、容易に設置場所の変更可能です。

さらに、PCへUSB接続すると会議時にカメラ・マイク・スピーカーとして利用可能です。そのため、Google Meetなどのその他のPC会議システムでの利用もできます。

Room 55

Room 55

主に参加メンバーが10人を超える会議での利用を想定した機器です。各拠点に可搬できるスタンドタイプのRoom 55を設定しています。

しかし、高価なため多くの台数の設定は現実的でないため、DX80やRoom Kit Miniで補完しています。

円会議室(Webex Codec Pro + SpeakerTrack 60 + Ceiling Microphone)

20200512205550
20200512204153 20200512204158

青山オフィスには広い円会議室が設定されています。

通常よりも広く、円形の会議室のためカスタマイズしてTV会議システムを構築しました。

カバー範囲の広いSpeakerTracker 60をスタンド化して設置、Ceiling Microphoneを2台設置して全体で良好な集音を実現させています。

推奨ソフトウェアの指定と利用方法の提示

社内ではWebex Teams利用を推奨。メンバーを事前にチーム招待、トピック毎にスペースを作成する事で場をつくり、ハドル的コミュニケーションに優れセキュリティと利便性のバランスを取ることが可能。

トピックに合わせたスペースを作成できるので、用途ごとのクラウド会議室が必要なタイミングで時間や場所にとらわれなく利用できます。チャットやホワイトボード、必要な資料スペースも完備いています。

外部のゲストを一時的にゲストとして招待し、ブラウザアクセスで利用可能です。メンバー以外の接続は受付処理が必要なため意図しない乱入を防止できます。

オフィスにいる場合、近くにあるCiscoのTV会議機器での資料共有が超音波を利用して容易に接続可能です。超音波で認証が完了するため、資料を共有する際のコネクタ不一致問題やケーブル長さ不足から解消されます。また、来客者など異なるネットワークを利用している場合でもクラウド経由で資料共有が可能になります。

Webex Eventsによる大規模会議やイベントの実施

Webex MeetingやWebex Eventsを利用。発言者・登壇者を固定、他メンバーのミュートや表情も確認し易いグリッド表示はじめ大規模開催に特化。

全グループ社員参加の社内イベント配信インフラとしてWebex Eventsを利用。YouTube Liveに比べると即時性に重点をおいているため動画品質は劣るが、低遅延による双方向性の確保。またURL認証でなくユーザ認証なので社外秘の情報でも安心して配信可能。

その他の導入時に行った施策

青山・幕張拠点を常時接続

会議室を予約して時間をそろえて会議、フリースペースで遠隔地と会議、と順に環境を整備してきました。その次のフェーズとして拠点間を常時接続を行い、他拠点のオフィスの様子が常に分かるようにしています。

場と場をつないでおくことで開発チーム内のコミュニケーション効率が向上し、お互いが別拠点にいても意識しあえる環境を構築しています。 要望のあるチームから順に導入しえおり、今後も徐々に追加予定です。

Azure ADとのSSO・プロビジョニング対応

社外秘情報でもやり取りできる環境を構築したことでコミュニケーションのコスト削減。次は大規模になってきたアカウンティング。プロビジョニングにてユーザアカウント作成の自動化、ログインのSSO化を整備。

社員がそれぞれ持っている会社のアカウントだけで、いつでもコミュニケーション可能となり、退職すると自動アカウント停止となるため運用コストが低減できます。

ログイン認証をAzure ADで一元管理をしているため、不自然なログイン検知の自動化もメリットになります。

海外拠点への導入

海外拠点があるため、そこへの導入も行いました。

機器の購入に関しては、Cisco TV会議機器を購入・保守契約は各国リセラーと契約しました。当初グループ会社ごとに機器の購入とクラウド契約を行ってSIPアドレスを共有していましたが、 現在ではクラウド契約を一本化し、機器も再アクティベーションで再利用しています。

また、弊社には中国の拠点もありますが、中国の場合はグレートファイアウォールに注意が必要です。北京接続用(暗号オプション無効)では接続できないので、現在はシンガポール接続用(暗号化オプション有効)を利用しています。事前にWebex各サーバとのネットワーク接続経路テストをするサイト Cisco Webex Network Test で確認をしましょう。

Googleカレンダーとの連携

One Tap Button Push

社内で利用しているGoogleカレンダーのカレンダーリソースとの連携を強化しています。

時間になるとWebex会議への参加ボタンが自動表示されるのでワンタップ参加。次の予約時間前になると次の予約が表示されるため会議室利用の効率化。

どこでもコミュニケーションへの変化

それはZOZOテクノロジーズ全社員利用の開始直後に発生しました。

令和元年9月直撃した台風15号。大型台風の接近際して試験的開始していたリモートワーク対策済PCを持ち帰るアナウンス。近距離での通勤が多い幕張拠点ですがそれでも通勤は混乱。チームいつでもTV会議を行える環境、リモートワーク対応もすすめていたため無理して出社せず自宅からの業務が可能でした。

その後、グループ再編や東京オリンピックに向けてグループでの導入を進めていたところ、新型コロナウィルス感染症による全社規模のリモートワークが発生しました。拠点間をつなぐ目的で始めた環境整備でしたが、社員間をつなぐ役割へと変化してきました。

オフィス閉鎖やリモートワーク化により、利用形態が変化してきても柔軟に対応でき、全社導入した効果を実感しています。

同時に、接続元や業務形態の変化はコミュニケーションの仕方にも変化を与えていると感じます。

タスクについては以前よりJiraでのチケット管理をしていましたが、業務上近くにいるメンバーとの声かけはオフィスではいつでも出来ていたので、チームの進捗は週次で確認していました。しかし、リモートワークになってからはチーム内対策ポータルを作成し、朝礼でチーム内の作業を日次で確認するよう変更しています。

「この後ちょっといいですか?」や「誰が出席したら良いかな?」という話題を朝礼の時に投げかけ、チーム内の共有を促進しています。

また、ヘッドセットの準備を行い相手に聞きやすい環境を意識しています。ハウリングなどで聞き取りにくい、聞き取れないということが続くとストレスの原因になります。自分自身では気がつきにくい問題なので、相互に指摘するようアナウンスしています。

私も部屋に風鈴を下げていたのですが、「何か音がする」と言われはじめ、TV会議の向こう側へも風鈴の音は流れているという事に気がつきました。今では毎朝仕事を開始する前に風鈴を外して、仕事が終わったら風鈴を戻すのが習慣となっています。

最後に

Google Jamboard

コーポレートエンジニアリング部では各サービスで得手不得手も違うので、相互補間を考慮してWebex以外のサービスも整備しています。

どこかのサービスが落ちた場合、不得手な環境であっても業務を継続出来る環境構築を目指しています。

ZOZOテクノロジーズでは、一緒にサービスを作り上げてくれる方を募集中です。ご興味のある方は、以下のリンクからぜひご応募ください!

tech.zozo.com

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