「ガチ対話」でエンジニアチームのエンゲージメントを高める1on1の工夫

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はじめに

BtoB開発部の増田です。

BtoB開発部は、主にFulfillment by ZOZO(以下、FBZ)の開発を担当しているエンジニアチームです。FBZの初回ローンチから間もなく3年経過しますが、サービスの拡大、拡張とともに見直すべき課題も増えてきました。日々の運用負荷の増大や、それに伴う開発効率の低下の話しを耳にする機会も増えています。そこで、今期の開発計画では、運用改善のための開発も優先度を上げて取り組むこととしていました。

一方で、新型コロナウィルスの影響もありチーム全体がリモートワークに移行して1年が経過しました。リモートワークが浸透する過程にはさまざまなコミュニケーション課題があり、上記の運用改善の施策を進める上でもコミュニケーションの円滑化が急務でした。

そのようなコミュニケーション課題の対策のひとつとして1on1に力を入れているチームも多いでしょう。この記事では、1on1の実施がエンジニアチームの生産性やパフォーマンスにどのような影響を与えるか、BtoB開発部における実績をひとつの事例として紹介します。加えて、1on1を起点としてチーム内の「ガチ対話」を増やしていくために、どのような工夫が考えられるかをまとめました。

組織サーベイの結果で示されたチーム状況の変化

まず今回の取り組みで実現されたチーム状況の変化を示します。ある時期から顕著にポジティブな変化が表れるようになりました。その変化は、組織サーベイの結果から定量的に知ることができます。

ZOZOテクノロジーズでは3か月に一度のペースで組織サーベイを実施しています。匿名アンケートの回答結果に基づき、チーム単位でのエンゲージメントを定期的にモニタリングしています。今期は、2020年6月、9月、12月の計3回を実施しており、直近の9月、12月に実施したサーベイの結果に特徴的な変化が表れていました。

着目している重要指標

組織サーベイの結果は、全部で36項目の指標で示されます。そのうち、BtoB開発部では以下の9項目を重要指標と位置付けて注視しています。

重要指標

今期は、FBZのサービス開発のなかで、エンジニアひとりひとりが成長を実感できる環境づくりに取り組んできました。リモートワークでもそのような環境が実現できているかを推し量るための指標として、下記の観点で重要指標9項目をピックアップしました。

  • 日々の業務にやりがいを感じられているか(職務、理念戦略)
  • エンジニアとしての成長実感を得られているか(自己成長)
  • 成長のためのチャレンジを支援できているか(支援)
  • リモートワークの中でも良好な人間関係を築けているか(人間関係)
  • 成果に対して納得できる評価を感じられているか(承認)

重要指標の定量的変化

9月、12月の結果を比較すると、全36項目のうち32項目で改善が見られました。重要指標9項目に着目しても、漏れなくすべての項目で大幅に改善されており、9月から12月にかけてチーム状況がポジティブに変化したことがわかります。

重要指標変化

変化の背景

BtoB開発部にとって、昨年9月は組織変更を行ったタイミングでした。この時期を境に、1on1をテンプレート化したり、チームごとの朝会・夕会を活発化するなどいくつかのコミュニケーション改善を実施してきました。特に1on1は、リモートワークで希薄になりやすいコミュニケーションを補強するために工夫をした部分です。次章では、この1on1に関してさらに説明していきます。

1on1の定期実施で意識したこと、わかったこと

もともとBtoB開発部では、前身の子会社時代から数年に渡って1on1を実施してきました。しかし、リモートワークに適応するため、実施頻度ややり方を見直す必要がありました。昨年9月以降の実施要領は以下のとおりです。

  • 最低でも隔週で実施する(時期や状況によっては週次での実施)
  • 1回あたりの時間は30分
  • 振り返りと傾向分析がしやすいように箇条書きレベルでログを残す
  • 各回の対話のテーマはメンバー側から設定する

上記要領に沿って対話のテーマをメンバーが設定する際には、下記の5つのカテゴリから設定してもらっています。

  • 質問をしたいです
  • 共有をしたいです
  • 雑談がしたいです
  • モヤモヤしています
  • ネタに困っています

期間中、私が10人のチームメンバーと行った1on1は合計80回で、テーマ数にして118個の対話をしました。テーマをカテゴリ別に集計すると、下記のグラフのような分布です。

1on1内訳

この集計結果と組織サーベイの結果をもとに、BtoB開発部における1on1の影響を、チームメンバーへの影響、エンジニアリングへの影響、リーダー自身への影響の3つの観点で振り返ってみます。

チームメンバーへの影響

カテゴリ別に見ると、「質問をしたいです」の割合がもっとも多く、全体の40.7%を占めていました。なかでも、事業方針や、各々の役割や期待値に関する内容が多く、リーダー側からの説明不足を痛感しました。

事業方針のような大きなテーマだけでなく、タスクアサインの背景やミーティングでは質問できなかった疑問点など、直近の出来事に関する背景確認も頻出するテーマのひとつです。リモートワーク環境下で普段よりも共有や背景説明が薄くなりがちですが、1on1で早期に情報共有の不足を検知することで、素早くフォローできるようになりました。

次に、「共有をしたいです」「雑談がしたいです」がそれぞれ19.5%、18.6%と同程度の割合でした。共有については、メンバーからの直近の進捗共有や課題共有が大多数です。それと同じくらい1on1での雑談の割合が多かったのは、リモートワークが常態化して特に顕著になった傾向です。

チームミーティングで日々メンバーと会話する機会はありますが、どうしても業務中心の会話になってしまいます。1on1で対話を深めていくには、雑談や何気ない会話から育まれる信頼関係が重要です。以前は対面の偶発的コミュニケーションによってその下地が作られていましたが、それを意識的に実施するために、あえて1on1でも雑談をメインとするケースは増えました。

組織サーベイの結果のうち、「支援」「人間関係」「理念戦略」の部分が改善した背景には、実務的な支援だけでなく雑談を含めたコミュニケーションによる関係性の向上があったと考えています。

エンジニアリングへの影響

冒頭でも述べたように、FBZのサービス拡大、拡張とともに見直すべき課題も増えてきました。日々の運用負荷の増大や、それに伴う開発効率の低下が課題になっており、今期の開発計画では運用改善のための開発も優先度を上げていました。

1on1での課題抽出は計画検討のための情報収集として有効ですが、情報収集の要素以外にも、チームの改善意欲の向上という副次的な効果がありました。

課題について対話する過程で課題認識を持っていたメンバーほど改善意欲が高まり、リーダーシップを発揮してくれるようになりました。メンバー自らが中心となり計画を立案して実践し、その結果、直近でもっとも大きな課題となっていたノイズアラート対策が完了しました。チームの生産性を改善する大きな成果でした。具体的な内容は以下の記事で紹介しています。 techblog.zozo.com

計画の中では、若手メンバーのチャレンジや興味のあるサービスの試験利用など、課題解決のなかでメンバーが成長実感を得やすくなるような工夫も盛り込まれていました。チームのエンジニアリングを考え直すきっかけにもなり、このことが組織サーベイの結果の「自己成長」を高めることに繋がりました。

リーダー自身への影響

1on1は、基本的にはメンバーのための時間としています。対話のテーマをメンバー自身で設定してもらっているのも、上長ではなくメンバーが話したいテーマにフォーカスするためです。

一方で、メンバーの成長促進や内省支援を心がけたいと意識しつつも、対話を重ねれば重ねるほど結果的にリーダー自身も内省を深めていくことになります。

メンバーが体験した達成感から成長の着想を得たり、メンバーが感じている事業方針への違和感からサービスの改善点が浮き彫りになるなど、1on1はリーダーのアクションの原動力にもなります。

その意味で、1on1はメンバーだけではなくリーダーを含む相互成長のための場であり、1on1の頻度が増えることはリーダーの成長機会の増加にも繋がると言えます。

「ガチ対話」を目指すための工夫

昨年12月、ZOZOテクノロジーズに組織開発チームが立ち上がりました。マネジメントを強化するための専門の部署が発足したことはうれしい変化です。さっそく、組織開発チーム主導のもと、1月から週1回30分の1on1が全社で必須化されるなど、新たな変化が始まっています。

組織開発チームが掲げるテーマのひとつに、

  • 創造性を解き放つために社内の「ガチ対話」を増やす

というものがありました。この半年、自分自身がマネジメントのなかで意識してきたことのひとつでもあります。メンバーの主張、願望、反論など、内面の声を表面化しやすくするにはどのような工夫が考えられるか。いま、BtoB開発部で「ガチ対話」を増やしていくために意識しているポイントが2つあります。

全員が少しずつリーダーシップを意識していく

役職や役割に囚われず、リーダーシップを持ったメンバーが増えると、チームは強くなり成果が生まれやすくなります。前述の運用改善のケースでも、メンバー自らがリーダーシップを発揮した結果として成果が生まれました。

このような事例が今後も続くようにするには、メンバーひとりひとりが考えること、実践することを繰り返していく必要があります。そのために、1on1のテーマのひとつとして、「もしあなたがリーダーだったらいま何をしますか」という対話を徐々に増やしていっています。

このテーマで対話することにより、意識が個からチームへ広がります。意識が広がる分、理解すべきことやわからないことが増えます。それをクリアにするためには何らかのアクションが必要で、そのアクションによって経験が積み増しされます。1on1でこうした循環が生まれてくると、メンバーとリーダーの思考発話の過程が「ガチ対話」へと発展しやすくなります。

感情を共有する

もうひとつ意識しているのが、感情の共有です。

  • ◯◯を達成してくれてありがとう!
  • ◯◯を実践してくれたことが嬉しいです!
  • ◯◯のアクションがとてもよかったね!
  • ◯◯をとても不安に思っています
  • ◯◯だったのがとても残念
  • ◯◯について共有不足で申し訳ない

など、自分自身の感情はできるだけ背景を言語化して伝えるようにしています。

リーダーが1on1を考えるとき、「傾聴」や「コーチング」などのテクニックにフォーカスしすぎてしまうことがあります。自分自身を振り返ってみても、1on1をより1on1っぽいものにするため、テクニックに偏った1on1をやってしまった経験があります。とにかく聴くこと、考えさせることを意識しすぎたあまり、禅問答のような対話に陥り「ガチ対話」とはほど遠くなっていました。

1on1を、会議よりも有意義な対話にするためには、もっと自然体で臨む必要があります。メンバーの言葉を聴き、感じた印象はストレートに伝えます。とりわけ、お互いの感情を織り交ぜながら対話するほうが伝わりやすくなります。

リーダーとメンバーがお互いの感情を伝え合い、感情面での共感や反発があって「ガチ対話」が生まれやすくなります。テクニックを身に付けていくことはもちろん重要ですが、テクニックを活かす土台作りとして、感情を共有しあうことを意識しています。

まとめ

以上、1on1のひとつの事例として、BtoB開発における取り組み紹介しました。組織サーベイの結果が改善されたことは、1on1に限らずいくつかの要素が複合的に作用し合った結果です。ただ、1on1を繰り返す過程で、チーム状況が好転していく手応えを感じることができました。改善すべき点は多々ありますが、今後も「ガチ対話」を増やすことを目指しながら成長を追求していきたいと思います。

また、組織サーベイの結果だけでなく、エンジニアとしての施策の遂行にも繋げられたことも重要な成果です。引き続き、アウトプットにつながる変化を生み出していきます。

さいごに

ZOZOテクノロジーズでは、BtoB事業の拡大に取り組んでいただけるエンジニアを絶賛募集中です。これまでの自社EC支援、物流支援に加えて、今後はブランドさまの実店舗との連携を強化するための開発を推進していく予定です。

ファッション業界のDX推進に関わる開発や、ブランドさまとの共同開発プロジェクトにご興味ある方は、こちらからぜひご応募ください!

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