NRF 2024 Retail's Big Show 参加レポート

NRF 2024 Retail's Big Show 参加レポート

はじめに

こんにちは、ZOZOMO部OMOバックエンドブロックの中島です。普段はZOZOMO店舗在庫取り置きというサービスの開発を担当しています。

2024年1月14日から16日の3日間にかけてニューヨークで開催された「NRF 2024: Retail's Big Show」に初めて現地参加してきました。

前半はNRF Retail's Big Showの概要と関連する情報、後半はFashion TechやRetail Techを中心にお伝えします。NRF 2024全体の概要については、NRF 2024 Event Recapなどをご覧ください。

目次

NRF Retail's Big Showとは

NRF Retail's Big Showは、毎年1月頃にNRF(National Retail Federation)が主催する世界最大級の小売産業向け展示会です。
2024年1月14日から16日までニューヨークで開催され、190以上のセッションが行われ、1,000以上の企業が出展しました。

NRF Retail's Big Showは毎年テーマが掲げられており、NRF 2024では「Make it Matter」というテーマでした。

Make it Matter

NRF 2024のサイト上では、おすすめホテルの紹介もされます。初参加で土地勘もなかったので、会場近くのホテル情報を得られて助かりました(ここから直接予約もできます)。

ホテル一覧

カンファレンスが近づくと、NRF 2024のアプリも公開されました。アプリを使うと、見たいセッションのチェックができたので、カンファレンス中のスケジュールを管理するのに便利でした。

NRF 2024アプリ

会場の概要

NRF 2024はJacob K. Javits Convention Centerで開催されました。

Jacob K. Javits Convention Centerの外観

2階がメインエントランスになっており、カンファレンスパス購入時に発行されるQRコードを使って受付をします。

NRF 2024受付

NRF 2024に参加するためのカンファレンスパスは、All-Access PassとExpo Passの2種類があります。Expo PassだとExpo会場のみ参加可能で、Keynoteセッションなどが開催される会場に入るには、All-Access Passが必要になります。
All-Access Passは8月頃から販売がはじまり、早ければ早いほど安く購入できます。来年参加する予定の方は、夏くらいから動き始めることをおすすめします。

受付の近くには、Amazon Goの店舗もありました。クレジットカードがあれば利用できる仕組みだったので、実際に商品を手に取り購入してみました。ゲートを通る前に、レシート送付先のメールアドレスを登録すると、ゲート通過後にメールで明細の確認もできます。ゲートを通るだけで商品購入ができるという体験は少し不思議な感じでした。

Amazon Goの店舗

早朝はDonuts Dunkというものがあり、ドーナツなど軽食を食べながらネットワーキングできる時間が設けられています。

Donuts Dunk、ドーナツ以外にヨーグルトやコーヒーもありました

世界的なイベントということもあり、日本企業の方も多く参加されていたので、そこでコミュニケーションを取ることができました(アメリカで名刺交換するとは思いませんでしたが)。

セッション

Javits Center内の4階5階が主なセッション会場になっていました。その中で最も大きなステージが、Keynoteセッションが行われるSAP Theatreステージになります(ステージごとにスポンサーの名前がついていました)。

Keynoteセッションが行われるSAP Theatre

オープニングセッションでは、NRFのCEOとLevi'sのPresidentのセッションでした。Levi'sが2023年に実施した取り組みの紹介などを対談形式で進行していました。
NRFの各種セッションは、基本的に複数人での対談形式で進行します。技術系のカンファレンスだとプレゼン主体で技術内容の説明をする形式が多いので、このようなセッションは個人的に新鮮でした。

いくつかセッションを聞いたり、Expoをまわったりする中で、やはりAIに関連する話題が非常に多かったです。その中でもWalmart CEOとSalesforce CEOが対談するKeynoteの中で、GUCCIがカスタマーサポートに生成AIを導入したことで一夜にして収益が30%増加した話は象徴的でした。

Expo

Javits Center内の1階3階が主なExpo会場になっていました。

主に大手企業が展示されている3階のExpo会場

Expo会場内は、各企業のブースがありますが、その中で、4つ特徴的なエリアがあります。

Expo Features

今回、Fashion TechやRetail Techで先進的な取り組みの内容を知りたかったので、ExpoではInnovation LabとStartup Hubを中心に回りました。
ZOZOTOWNは食品の取り扱いがないため、Foodservice Innovation Zoneは軽く回った程度ですが、ドライブスルーのエリアがあったところにアフターコロナを感じました。
また、Exhibitor Big IdeasはExpo Passでも参加できるExpo出展企業のセッション会場です。Exhibitor Big IdeasはNRF 2024のAgendaからセッション動画にアクセスできるので、気になる人はそちらから確認してください。

Fashion Tech

Fashion Tech関連の展示では、サイズ計測のサービスやAR関連のサービスを見ることができました。

サイズ計測

3D Foot Scanの機器(左がAetrex社、右がVolumental社)

Aetrex社の機器でScanした結果

足を3Dスキャンすることで、サイズがフィットするかを判別するソリューションがいくつかありました。ただ、その計測機器が高価だったので、一般化していくにはまだ時間がかかりそうな印象を受けました。

ARミラー

ZERO10社のARミラー

AR関連でバーチャル試着系のサービスもありました。実際に試して見ましたが、人の周りにエフェクトがかかったり、雨が降ったりなど、エンタメ要素が強いものでした。そのため、いろいろな服をデジタルで試着するサービスというよりは、人の足を止める集客ツールという印象でした。試着用の洋服データを準備することも必要になるので、精度の高いバーチャル試着の仕組みを作るのはまだ難しいのかもしれません。

ロレアル社のパーソナライズリップスティック

AR関連では、ロレアル社の展示が目を惹きました。

ロレアル社のパーソナライズリップスティック

左側のアプリで口紅の色を決め、右側のデバイスにその色の配合になる口紅が出てきます。決まった口紅をお店で買うのではなく、その日にあった口紅を作るという発想に驚きました。また、このプロダクトはOEMなどではなく、ロレアル社の自社開発プロダクトという点も驚きでした。
サービスの詳細は以下の動画を見てもらうのがわかりやすいと思います。

www.youtube.com

このとき初めて知りましたがすでに販売開始しており、2022年に日本上陸もしています。国内では表参道フラッグシップ ブティックで体験できるので、興味のある方は確認してみてください。

Retail Tech

Retail Techでは、スマートカートとRFIDに関する展示が多かったように感じました。

スマートカート

展示されていたスマートカートの例

展示されていたスマートカートは、カートとPOSレジが合体したようなものを多く見ました。カートで商品の場所を教えてくれたり、カートに商品をいれると商品判別と価格の自動計算をしてくれたりします。日本でもスーパーなどで、スマホでバーコードスキャンするようなものがありますが、それがショッピングカートと合体してより高精度になったイメージです。数年後は日本でもこのようなカートが当たり前にある世界が来るのかもしれません。

Amazon Dash Cart、レコメンドを表示したり、商品を自動判別したりする

ECでの買い物の場合、カートに商品を入れたりすると、おすすめ商品のようにパーソナライズされた情報提供があります。今回展示されていたようなショッピングカートが一般化すれば、リアルの世界でも、同じようにパーソナライズされた情報提供ができるようになっていくと思います。

RFID

RFIDは、国内アパレルだと棚卸しなどで使われるイメージでしたが、生鮮食品の生産から店頭に並ぶまで、すべてトラッキングしてデータ化されているものを見ることができました。どこでいつ作られたものかだけではなく、どこからどこに移動したかがわかるため、CO2排出量の管理ができるようになっていました。サステナビリティに対する取り組みにはこういう技術的なアプローチがあることを知ることができました。

RFIDリーダーで商品を特定する様子

RFIDタグが付いた商品のトラッキングができる

アパレル関連で、RFID関連を使ったテクノロジーでNexite社のサービスも目に留まりました。商品の位置情報を把握して、商品の移動情報がわかるものでした。例えば商品が何回試着室に持っていかれたかがわかるので、商品の購買前のデータで分析が可能になります。

Nexite社のブース

AmazonのJust Walk OutとAmazon One

実店舗での売上の最大化をしたいと考えたときに、どうしてもレジがボトルネックになります。レジの効率化のために、最近だとセルフレジやスマホをレジ代わりにするサービスがよく使われるようになってきています。そんな中で、AWSのブースにあったJust Walk OutとAmazon Oneの組み合わせは新しい解決策に見えました。

AmazonのJust Walk OutとAmazon One

簡単に説明すると、以下のようなもので、すでにアメリカのスタジアムなどで導入されているそうです。

  • 商品判別はRFIDで実施 = レジ打ちが不要
  • 手のひら認証で決済 = 財布・スマホが不要

最近だと、財布がなくてもスマホがあれば買い物に困らないことが増えましたが、スマホすらなくても商品購入できる世界を作ろうとしているのには驚きました。日本でもどこかで使えるようになるのを楽しみにしています。
また、AWSのブースでは、日本語でアテンドをしていただけたことで、Expoをより楽しむことができました。この場を借りて御礼申し上げます。

おわりに

ホテルから歩いていけたタイムズスクエア

OMO関連の新サービスが出てきているか気になっていましたが、まったく新しいサービスというものはなかったように思います。ただ、日本との違いとして、すでにBOPISやBORISなどは普通にできる環境が整っていて、その先でよりオンラインとオフラインをシームレスにつなげることを考えているように感じました。

今回のNRF視察は開発部門の福利厚生である「セミナー・カンファレンス参加支援制度」を利用しての参加となります。

NRF 2024は技術カンファレンスではないですが、小売の中でテクノロジーが介在しない事はありえないので、技術者がこのようなイベントに参加することで得られるものも確実にあります。また、Expoを回る中で、ZOZOFITやZOZO CHAMPIONSHIPでZOZOを知っている企業がいくつかあったのは嬉しかったです。

NRF Retail's Big Showはこれまでニューヨークでのみ開催されていましたが、2024年6月にはじめてシンガポールで開催されます。アジア系の企業が多く出店されるようですので、日本からだとこちらのほうが参加しやすいかもしれません。

ZOZOでは、各種エンジニアを採用中です。ご興味のある方は以下のリンクからご応募ください。

corp.zozo.com

最後までご覧いただきありがとうございました!

カテゴリー