#MIRU2022 参加レポート

MIRU2022参加レポート

こんにちは。ZOZO ResearchのResearcherの平川と古澤です。2022年7月25日(月)から7月28日(木)にかけて画像の認識・理解シンポジウムMIRU2022に参加しました。この記事では、MIRU2022でのZOZO Researchのメンバーの取り組みやMIRU2022の様子について報告します。

目次

MIRU2022

MIRUとは、Meeting on Image Recognition and Understandingという画像の認識・理解についてのシンポジウムです。2022年の今回はアクリエひめじ(姫路市文化コンベンションセンター)においてオフラインとオンラインのハイブリッド形式で開催されました。数年ぶりに現地参加も可能ということで1243名の方々が参加されたそうです。ZOZO NEXTは、このMIRU2022にゴールドスポンサーとして協賛させていただきました。

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企業展示

企業展示ブースの様子

企業展示ブースの様子

企業展示ブースでは、ZOZO Researchにおける取り組みについてポスターを用いて紹介しました。ZOZOの多角的なファッションサービスとそこから得られる情報資産を活用した研究事例について紹介させていただきました。大変うれしいことに多くの方々に興味を持っていただき、お話をさせていただくことができました。ブースまで足を運んでくださった皆さま、誠にありがとうございました。展示していたポスターはこちらです。

インタラクティブセッション

ZOZO Researchからはロングオーラル1件とインタラクティブセッション2件の計3件を発表しました。以下に、各研究のサマリーを示します。

[OL3B-3]条件付き集合変換を用いたファッションコーディネートの補完 (ロングオーラル)

中村 拓磨、斎藤 侑輝 (ZOZO Research)
ファッションコーディネート補完問題は、複数の衣服やアクセサリーの組み合わせからなるファッションコーディネートを推薦する技術を実現するための重要な課題として知られています。コーディネート補完問題は、完成したコーディネートに対する評価値計算を前提とする従来手法を用いる場合、補完候補アイテム集合から評価値が最大になるアイテムの組み合わせを探索する問題に帰着します[1][2]。しかしながら、補完候補アイテム集合の要素数が増大するにつれて、探索コストが増大するという課題があります。そこで、本研究ではコーディネート補完問題を指定の条件下における集合検索問題として定式化し、入力アイテム集合と補完候補アイテム集合の属性を反映した特徴量を生成可能なモデルとその学習手法を提案しました。提案手法は指定の条件下で入力アイテムの集合と相補的なアイテム集合を直接的に予測可能であるため、探索空間の増大に伴い推論時の計算量が増大する問題を原理的に解決するアプローチと言えます。実データを用いた性能比較実験では提案手法が入力アイテム集合と相補的なアイテム集合を予測できていること及び出力集合の要素の属性情報を制御可能であることを示しました。
[1] Cucurull, Guillem, Perouz Taslakian, and David Vazquez. "Context-aware visual compatibility prediction." Proceedings of the IEEE/CVF conference on computer vision and pattern recognition. 2019.
[2] Saito, Y., Nakamura, T., Hachiya, H. and Fukumizu, K.: Exchangeable Deep Neural Networks for Set-to-Set Matching and Learning, ECCV2020: Proceedings, Part XVII, p. 626‒646. 2020.

[IS3-27]ファッション推薦問題に向けた階層的集合マッチングモデルの検討

長瀬准平(ZOZO Research, 芝浦工大)、斎藤侑輝(ZOZO Research)、石渡哲哉(芝浦工大)
ファッションコーディネート間のマッチング問題はファッションに関する様々な推薦タスクへの応用が期待される重要な問題です。コーディネートは複数のファッションアイテムからなる集合と見なせますが[2]、本研究ではコーディネートの集合間のマッチング問題を新たに提起し、階層的な相互作用を考慮した深層学習モデルを提案しました。提案手法は、置換不変な特徴量抽出器であるCrossSimilarity関数[2]を拡張した、コーディネートとアイテムという異なる階層の相互作用を考慮可能な階層的集合マッチングモデルから成ります。実データを用いた比較検証実験では従来手法と比較してマッチング精度が改善することを確認しました。
[2] Saito, Y., Nakamura, T., Hachiya, H. and Fukumizu, K.: Exchangeable Deep Neural Networks for Set-to-Set Matching and Learning, ECCV2020: Proceedings, Part XVII, p. 626‒646. 2020.

[IS3-55]身体と衣服の採寸情報を考慮する仮想試着のためのレイアウト生成モデルの検討

後藤 亮介、中村 拓磨 (ZOZO Research)
オンラインショッピングにおいては購入以前に衣服のサイズを正確に把握することが困難であるという課題があります。近年では画像ベース仮想試着技術の研究が盛んに行われていますが着用者の体型や衣服のサイズを明示的に考慮した研究がなされていないのが現状です[3][4][5]。本研究では、ZOZOTOWNのデータから着用者の身長と衣服の寸法を含むデータセットを構築し、衣服と身体の寸法を明示的に考慮したレイアウト生成モデルのベースラインモデルを学習しました。更に、身長や着丈の情報を反映できていることを確認するための定量評価指標を提案しました。
[3] Han, Xintong, et al. “Viton: An image-based virtual try-on network.” Proceedings of the IEEE conference on computer vision and pattern recognition. 2018
[4] Choi, Seunghwan, et al. “Viton-hd: High-resolution virtual try-on via misalignment-aware normalization.” Proceedings of the IEEE/CVF Conference on Computer Vision and Pattern Recognition. 2021
[5] Neuberger, Assaf, et al. “Image based virtual try-on network from unpaired data.” Proceedings of the IEEE/CVF Conference on Computer Vision and Pattern Recognition. 2020.

気になった研究発表

私たちが個人的に興味を持った研究について紹介します。

[OL1B-4] Cross-Modal Recipe Embeddingを用いたマスクに基づく食事画像生成

陳 仲涛、本部 勇真、楊 景、柳井 啓司 (電気通信大学)
敵対的生成ネットワークによる画像生成の技術の進展により、リアルな画像の生成が可能となってきています。一方で、料理画像を生成するタスクでは、料理は食材だけでなく作り方や盛り付けによっても見た目や形が大きく変わるという特性上、レシピや盛り付けを反映したリアルな料理画像の生成が難しかったそうです。この研究では、レシピテキストと料理領域から料理を料理領域に盛り付けた画像を生成するMask-based Recipe Embedding GAN (MRE-GAN)を提案されていました。レシピテキストから料理画像を生成するRDE-GANというモデルとセマンティック領域適応正規化を組みわせることで、より安定的に学習ができるようになったとのことです。実験結果として、スープのレシピから枝豆を抜くと生成された料理画像から枝豆が消えるという面白い事例を示されておりました。ファッションの分野でも仮想試着などの文脈で画像生成が注目を集めています。個人的には料理の調理方法というのは洋服の着こなしとも対応しているのかなと感じました。将来的にそういった研究もできると面白そうです。

[OL2A-2] 深層モデルの汎化性能改善を目的とした特徴抽出器の事後学習

山田 陵太、佐藤 育郎、田中 正行、井上 中順、川上 玲 (東京工業大学/デンソーITラボ)
深層モデルにおいて、局所解周りの平坦さがモデルの汎化性能と関係していることが示唆されています。例えばSharpness-Aware Minimizationと呼ばれる解の平坦性まで考慮した最適化手法では、より汎化性能の高い解を得やすいということが知られています。このため局所解近傍における損失形状の平坦化が重要です。この研究では、既に充分に学習された深層モデルを初期状態として、そこからさらに平坦な局所解を探索できる事後学習法を提案されていました。提案手法では、まず深層モデルの前半と後半を抽出器と識別器にわけ、識別器側にミニバッチ損失を最小化するような摂動を加えていました。その後、摂動された識別器の平均を最小化するように、さらに抽出器のパラメータを最適化されていました。このように構築されたモデルを評価すると、4つのうち3つのデータセットにおいて、Sharpness-Aware Minimizationによって学習されたモデルを事後的に性能改善できたそうです。一般の学習済み深層学習モデルの汎化性能を向上させられる最適化手法という点で非常に興味深いと感じました。摂動のハイパーパラメータを訓練データとテストデータのミニバッチ損失最小解までの距離から決定されていましたが、個人的にはこのパラメータがデータセットごとにどの程度変わるかという点にも興味を持ちました。

[IS3-73] 布生地の風合いの画像認識

鈴木大智、相澤清晴(東京大学)
ECサイトで衣服を販売する際の課題として衣服に使用されている生地の風合いを伝えることが困難であるという点が挙げられます。衣服の手触りに関する先行研究では手触りとの相関が強い物理特性として、生地の厚さ、柔らかさ、粗さが挙げられているそうです。こちらの研究ではKES(Kawabata Evaluation System)と呼ばれる計測機器を用いて生地の物理特性を測定し、衣服の表面画像から生地の厚さ、柔らかさ、粗さを予測モデルを構築するためのデータセットが提案されています。個人的には衣服の表面画像から計測に長時間を要する衣服の物理特性を予測できるという点が非常に興味深いと思いました。将来的には手触りの情報と仮想試着技術を組み合わせることにより、より実店舗に近いユーザ体験を実現できるかもしれませんね。

[OL3A-3] Database-adaptive transfer learning for question answering-based re-ranking in cross-modal retrieval

Rintaro Yanagi, Ren Togo, Takahiro Ogawa, Miki Haseyama (北海道大学)
ECサイトにおいてキーワード検索の精度はユーザー体験を左右する重要な要素です。画像のキャプションと検索キーワードのテキストベースのマッチンングによるアプローチでは、検索対象の画像へのキャプション付与が必須であるという課題があります。近年ではキャプション付与のコストを軽減するアプローチとして画像と検索キーワードを同一空間に埋め込む手法が提案されていますが、類似画像や曖昧な検索キーワードに対する頑健性には改善の余地があります。こちらの研究では、システムがユーザーに対して質問を生成することにより、検索キーワードに含まれる情報を対話的に補完するシステムが提案されています。ZOZOTOWNの商品検索においても、システムがユーザーの意図を汲み取って対話的に商品検索する仕組みを導入すれば、より良いユーザー体験を実現できるかもしれません。

オフライン参加によって得られた気付き

初日のチュートリアルでは、Transformer誕生の歴史や複数画像から3次元自由視点画像を生成する技術など、近年のコンピュータービジョン分野のトレンドを俯瞰的に知ることができて大変勉強になりました。MIRU2022に投稿された論文はCLIP、自己教師あり学習、ドメイン適用、NeRFがキーワードになる研究が多かったように感じました。インタラクティブセッションでは著者とのディスカッションを通じて弊社のサービスに活かせそうなアイデアを得ることもできました。MIRU2022では様々な研究者や学生の方々と直接オフラインで議論する機会も沢山あり、個人的にはオンライン参加よりも実りの多い時間を過ごせたと思います。

最後に

ZOZO NEXTでは次々に登場する新しい技術を使いこなし、プロダクトの品質を改善できるエンジニアを募集しています。ご興味のある方は、以下のリンクからぜひご応募ください。

zozonext.com

おまけ

学会の合間に明石焼き風たこ焼きを食べに行きました。

学会の合間に食べた明石焼き風たこ焼き

ご満悦。

MIRU2022を堪能できてご満悦の表情

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