こんにちは、データチームの後藤です。 VASILYデータチームは2016年11月16日~18日にかけて、京都大学で行われた第19回情報論的学習理論ワークショップ(以下、IBIS2016)に参加しました。本記事では、発表の様子や参加した感想をお伝えしたいと思います。
IBIS2016
IBISは、機械学習に関する国内最大規模の学会です。機械学習や統計学、情報理論などの理論研究や、機械学習の応用的な研究が対象となります。VASILYがこれまで機械学習を応用した様々なサービスを開発しており、その中でもファッションアイテムの検索システムはオリジナルの貢献を含んでいるので、今回発表することに決めました。
世の中の人工知能や深層学習への期待感からか、今年は例年よりも参加者が格段に増えたようです。具体的な数は聞かされていませんが、論文・ポスター合わせて200程度の発表があったので、参加者はその2~3倍はいるのではないでしょうか。例年、ポスタープレビューの一人あたりの持ち時間が1分だったところ、今年は一人30秒に削減されたほどです。
発表
我々は、初日のディスカッショントラックで「VAEとGANを活用したファッションアイテムの特徴抽出と検索システムへの応用」というタイトルで研究・開発の成果を発表しました。
参加機関は大学や研究所、企業など様々で、企業の発表は全体の1/4ほどを占めていました。その中でもほとんどは大企業の研究所で、VASILYのようなITベンチャーは他にありませんでした。発表内容もファッションということで、かなり異色で「みんなファッションなんて興味を持たないんじゃ。。。」と不安がよぎりましたが、蓋を開けてみれば2時間半の間、息をつく暇もないほどの盛況で、ずっと喋り続けることになりました。事前に準備していた配布用資料も配り尽くしてしまい、数が足りないほどでした。
ディスカッション・トラックでは、皆様が積極的に内容を理解しようとしてくれたので、とてもやりがいがありました。近傍探索アルゴリズムや評価方法についてもアドバイスをいただけて、たいへん有意義な時間でした。ディスカッション・トラックを聞きに来てくださった皆様、ありがとうございました。
技術的な詳細は、別の記事にしましたので、目を通して頂けると幸いです。
感想
この学会を通じて、機械学習の様々な研究に触れることで、その応用範囲の広さに驚きましたし、特に医療やヘルスケア、車の自動運転への応用などは世の中の期待を背負っているなと感じました。
今年のIBISのテーマは「ブームを乗り越える」ということで、招待講演では近年の人工知能・機械学習ブームをブームのままで終わらせないための、基礎研究の進展や実際に解決すべき問題が紹介されました。
深層学習の基礎的な理解のために理論解析を試みたり、神経細胞の信号伝達の優れた点を実験的、数理的な側面から理解しようという研究があるようです。深層学習で現実の問題を解決するのに生物と同じやり方である必要はないといった立場だったり、逆に生物が行っているやり方を深く追求することで、脳の情報処理の本質的な理解を得ようとする研究だったり、様々な観点の研究があることも知りました。
我々は技術とデザインの力でより便利なサービスを仕立てることが仕事なので、研究者とは目的が大きく異なります。極端に言えば、機械学習の基礎的な理解よりも、精度を出すことのほうが大事だったりします。しかし、我々が活用している技術を完全に理解し、高速化・高精度化を目指すのであれば、基礎研究をきちんと追いかける必要があると感じました。
ブームを乗り越えるという意味では、我々がやっている機械学習の研究を実際に使えるサービスに変えていくという仕事も、その一旦を担うことができるのではと考えています。データチームはファッション×IT領域特有の問題を機械学習を使って解決し、少しずつ着実に実績を作っています。将来的には、ファッションの分野においてVASILYの技術が必要不可欠であるようになれば大成功でしょうか。
来年のIBIS2017は東京大学本郷キャンパスで行われるようです。データチームはすでにどんな内容を持っていこうかと相談中です。皆様がどんなふうにブームを乗り越えてくるのか、今からとても楽しみですね。
幾つか、講演の発表資料が公開されていますので、リンクをまとめておきます。講演資料が無いものに関しては紹介されていた論文のリンクを張っています。
IBIS2016 招待講演・企画セッション資料
鈴木大慈「低ランクテンソルの学習理論と計算理論」
http://www.slideshare.net/trinmu/ibis2016
岡野原大輔「深層学習は世界をどのように変えられるのか」
http://www.slideshare.net/pfi/ibis2016okanohara-69230358
瀧川一学「科学と機械学習のあいだ:変量の設計・変換・選択・交互作用・線形性」
http://www.slideshare.net/itakigawa/ss-69269618
恐神貴行「動的ボルツマンマシン」
http://ibisml.org/ibis2016/files/2016/09/IBIS2016-osogami.pdf
IBIS2016 講演関連論文
山田誠「Beyond Ranking: Optimizing Whole-Page Presentation」
http://www-personal.umich.edu/~raywang/pub/wsdm402-wang.pdf
気になった研究
D2-24: b-GAN: 密度比推定の視点から見たGenerative Adversarial Nets
上原雅俊(東京大学)、佐藤一誠(東京大学)、鈴木雅大(東京大学)、中山浩太郎(東京大学)、松尾豊(東京大学)
密度比推定によって最適化するGANを提案した。密度比推定の知見を使うことができるため、理論的に扱いやすい。
D2-30: Weight Normalizationに基づく自然勾配法の実現
唐木田亮(東京大学大学院新領域創成科学研究科),岡田真人(東京大学大学院新領域創成科学研究科),甘利俊一(理研BSI)
パラメータの最適化を、動径と方向の座標成分に分解して最急降下させる勾配法が何故うまくいくのかを理論的に明らかにし、より良い手法を提案した。
D2-44: Theoretical Analysis for Parameter Transfer Learning
熊谷亘(神奈川大学)
https://arxiv.org/abs/1610.08696
転移学習の理論解析の話。サンプル数と転移学習可能性についての関係が得られている。
おまけ
学会の合間に、秋の京都を満喫しました。紅葉がピークを迎えており、非常に美しい紅葉を拝むことができました。
南禅寺(夜)
三千院(早朝)
最後に
VASILYでは、最新の研究にアンテナを張りながら、同時にユーザーの課題解決を積極的に行うメンバーを募集しています。 興味のある方はこちらからご応募ください。