まつもとゆきひろ氏が語る、若手エンジニアに今伝えたいこと

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こんにちは、広報の秋山です。 先日、青山オフィスに技術顧問であるまつもとゆきひろ(以下、Matz)氏が来社し、新入社員に向けた講演とパネルディスカッションを行いました。

まつもと ゆきひろ氏 (@yukihiro_matz)

1965年生まれ。筑波大学第三学群情報学類卒業。プログラミング言語Rubyの生みの親。株式会社ネットワーク応用通信研究所フェロー、一般財団法人Rubyアソシエーション理事長、ZOZOテクノロジーズをはじめとした複数社の技術顧問、Herokuチーフアーキテクトなどを兼任。松江市名誉市民。通称 Matz(マッツ)。

若手エンジニアの生存戦略とは

講演では、「若手エンジニアの生存戦略」というテーマで、「わらしべ長者」を例に取り上げました。

「わらしべ長者」とは

日本おとぎ話の一つ。お金持ちになりたいと願うある若者が、お寺で観音様に「どうか、お金持ちになれますように」とお願い。「ここを出て、最初につかんだ物が、お前を金持ちにしてくれるだろう」という観音様の言葉を信じ、お寺を出た。お寺を出て、最初につかんだものが「わらしべ」。この「わらしべ」を価値あるものに交換し続け、最終的に屋敷を手に入れ、お金持ち「長者」になったことから、この若者を「わらしべ長者」という。

「わらしべ長者」の話を通じて、以下が伝えられました。

「価値は作ることができる」
簡単に入手できるものから価値は作ることができます。自分が価値を生成することや、他人に対して自分のもつ価値をプレゼンすること、将来の期待度に価値を見いだすことも大切です。価値は手を加えることで増加させることができます。ぜひ若いうちに価値の実態を考えてみてください。

「価値は一様ではない」
現代の社会では均一な価値を見いだしがちですが、近所で買う缶ジュースと富士山で買う缶ジュースの値段が違うように、実際は場所や状況次第で価値は変化します。価値が高まる場所はどこかを常に考えることで、新たな価値に気づく事ができます。

「価値は高める事ができる」
知識をインプットする、経験を積む、スキルを伸ばすことにより、価値は高めることができます。現在の価値を考えるだけでなく、価値を高めるためにどうするべきかを考えて仕事に取り組んでください。

最後に、Matzさんから新入社員に向けてメッセージをいただきました。

一見価値が低いと感じるものを、価値が高いと感じる人に売り込むことで次の段階に進むことができます。これは人生において有効な戦略です。客観的な視点で自分の価値を高めていくことができる人、価値を作りだすことができる人は強いです。それは、社会人における一種の「生存戦略」でもあります。ぜひ皆さんも自分のもつリソース(知識・スキル・興味・態度など自分自身が持つもの)を棚おろしして、異なる視点を持つ人に価値高くプレゼンテーションしてみてください。今後会社組織の一員として、皆さんが自分自身の価値を高め、成長をしていくことを期待しています。

講演を聞いて、新入社員からMatzさんへ沢山の質問が投げかけられました。いくつかご紹介します。 f:id:vasilyjp:20190418113404j:plain

ー 社会人になって「わらしべ長者」ような経験をしたことはありますか
当時、200名ほど新卒がいる大きな会社に就職したのですが、そのなかでもコンピューターサイエンスのスキルが高い方だったので、そこを最大限生かし、ステップアップしていきました。会社の求めているスキルを自分がさらに高め、活用することで高く評価してもらうことができました。

ー もし自分たちの年代であったら何を作りたいと思いますか
プログラミング言語に対する興味がまだ強いので、またプログラミング言語を作ります。自分の考えを表現する方法をデザインすることは、魅力的であると感じています。

ー なぜ言語にRubyという名前をつけたのですか?
既に存在していたPerlがスペルは違うが宝石の名前なので、同じ宝石からつけたいと思っていました。最終的にはCoralかRubyで悩んだのですが、一番文字数も少ないしきれいだしRubyにしました(笑)。ちなみに、後で気付いたのですが宝石のパールは6月の誕生石でルビーは7月の誕生石、Perlの次だしちょうど良い結果になりました。

パネルディスカッションの様子

講演後、Matzさんと弊社社員によるパネルディスカッションを実施しました。 f:id:vasilyjp:20190418113507j:plain

【パネラー】
まつもとゆきひろ氏
ZOZOテクノロジーズ 技術顧問
瀬尾直利
ZOZOテクノロジーズ 開発部 ML & SRE スペシャリスト   

【ファシリテーター】
今村雅幸
ZOZOテクノロジーズ 執行役員 VP of Engineering 開発部部長

ー今振り返って、若いときにやっておいて良かったと思うことは何ですか?

Matz:コンピューターサイエンスとプログラミングの勉強です。当時はインターネットもあまり普及していなかった事情もあるのですが、世の中にあるフリーソフトのソースコードを読んで勉強していたのは、やっておいて良かった勉強法だったと思います。

瀬尾:コンピューターサイエンスの基礎を学ぶことです。基礎を学んでおくことで、普段触れていない範囲の技術・知識が必要になった場合、それらの基礎があることで理解がしやすくなり、キャッチアップしやすくなる場面も多くなります。

ーお二人が働き始めた頃と今では技術のトレンドが変化してきていると思いますが、ご自身の業務範囲ではどんな変化がありましたか?そして、これからどう変わっていくと思いますか?

Matz:一番の変化はインターネットの存在です。昔はデスクトップアプリを作っていましたが、今はブラウザの中で全て完結可能なブラウザアプリが主流になりました。一方、言語やOSなど本質的にはあまり変わらない領域も存在します。そういった意味では自身の専門領域は大きく変わりませんでした。直近5〜10年で変わってこなかった部分は引き続き変わらないと思います。Webアプリケーションはまた違うアーキテクチャに変わってくかもしれませんね。

瀬尾:インフラの文脈だと大きく変わりました。昔は手作業でオペレーションをするのが当たり前の世界でしたが、今はクラウド上でインフラの設定ができるようになり、自動化も進んだことで手作業を主としていたエンジニアは少なくなりました。プログラムを書いて自動化する範囲が広がってきています。今後も変化は続くと思うので、これからも情報にアンテナをはり、時代の流れを見越して自身も行動をしていきたいです。

ー学生の頃の個人開発と、社会人としての仕事としての開発、どう違うと思いますか?何か気をつけるべきことありますか?

Matz:職業的ソフトウエア開発者になって一番違うと感じたのは、締め切りを強く意識するようになったことです。受託開発も多かったので、期日内に開発をするためのスケジュール管理を徹底しなければなりません。数多くの受託開発を通じて、理想のソフトウエア開発はエンジニアだけでなく関わるプロジェクトメンバー全員が同じ方向を向いていることが大切であると感じました。それぞれの特性や考えを尊重しつつ、期日に業務を仕上げるためにメンバーと協力して取り組む必要があります。

瀬尾:一番の違いはチームであるということです。プログラミングという観点から言えば、周囲からレビューをもらうことができ、より良いものを作り上げていくことができます。個人ではなくチームなので、コミュニケーションをしっかりとって報告・連絡・相談を徹底すること、最終的なアウトプットのソースコードだけでなく、そこに至るまでの背景や動機なども記録として残し、連携を取りやすくすることも大切です。

ー他社とZOZOテクノロジーズの違いって何ですか?

Matz:ファッションという軸を持ち、テクノロジーを駆使しながら社員の皆さんが同じ方向性を向いて自社サービス開発に努めているという印象です。個性豊かな社員も多く、前向きに業務に取り組まれていると感じます。

瀬尾:良い意味で一般的なインターネット企業との違いは無い状態になってきたと思います。それは、エンジニアが働く上で、社内の制度などが良い環境に整ってきたという点です。現在でも、社内の変化は速く、働きやすい環境が整備されてきていると思います。また、人を喜ばせることが好きな社員が多く、真剣に仕事に打ち込みながらも、楽しく仕事ができています。

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最後に

講演とパネルディスカッションを通じ、多くのインプットをしながら自分を見つめ直したことで、新たな気づきを得られたのではないかと思います。今後も新入社員の皆さん1人1人の価値を最大限に生かし、楽しく働きながら企業理念の達成に向けて社員一丸となって取り組んでいきたいと思います。新入社員の皆様の今後の活躍を期待しています!

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