Microsoft MVPの受賞報告と、受賞のためにしたこと

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こんにちは。ZOZOテクノロジーズの廣瀬です。

私は2020年8月に、Microsoft MVPをData Platformカテゴリにおいて受賞しました。本カテゴリにおける現在の日本の受賞者は私で10人目となります。本記事ではMicrosoft MVPの概要と、受賞するためにどのようなことを意識して、どのような行動をとっていたのかについてご紹介します。

Microsoft MVPとは

Microsoft MVPとは、Microsoftに関連する技術コミュニティにおいて大きく貢献した人物を表彰する制度で、1年間有効なアワードです。再受賞のためには、毎年審査が必要になります。Microsoft MVP for xxxというように、特定のカテゴリごとに受賞者が決まり、現在では11カテゴリにおいて約2900名のMVPが世界中に存在しています。受賞者はMVP一覧ページにプロフィールが掲載されます。

mvp.microsoft.com

公式ページによると、Microsoft MVPの人物像について以下のような記述があります。

  • 熱意をもって自身の知識をコミュニティへ共有するテクノロジーの専門家
  • Microsoftの製品とサービスに関する極めて深い知識がある
  • 優れた技術力に加えて、常に進んで他者を助ける

また、MVPを受賞すると以下のような特典を受けることができます。

  • Microsoft製品への早期アクセス
  • 製品チームと直接やり取りできるチャネルへの参加
  • 本社が主催する年次イベントGlobal MVP Summitへの招待

MVPになるには、以下の2ステップが必要となります。

  1. Microsoftの常勤従業員(FTE)またはMicrosoft MVPから推薦状を提出してもらう
  2. 自分自身で過去1年間のコミュニティ活動実績をアピールする

MVP受賞者には、記念品が贈られます。 image 大きな箱が届きます。外見もかっこいいです。

image トロフィーや盾などが入っています。早速部屋に飾りました。

次に、Microsoft MVPを受賞するためにどのようなことを意識して、どのような行動をとっていたのかについてご紹介します。

受賞のためにしたこと

1. Microsoft MVPの受賞を目標に設定する

私がMicrosoft MVPの受賞を目指そうと決めたのは、2年半ほど前のことです。その当時はまだコミュティ活動を活発に行えているとは言えない状況でした。そこで、受賞を目指すために必要な行動を整理し、少しずつアウトプットの質と量とチャネルを増やしていきました。その結果、受賞した活動期間(2019/07-2020/06)においては、以下のような活動実績となりました。

2. 継続的にコミュニティへ参加する

私はJapan SQL Server User Groupという技術コミュニティに所属し、勉強会でほぼ毎月登壇しています。コミュニティに自身の学びを還元することで、他の方の学びにつながることもあれば、逆に参加者から有益なフィードバックをいただけることもあります。

登壇すると直接フィードバックをいただけるので、次回の登壇のモチベーションにつながります。このように、コミュニティに参加することでアウトプットのモチベーションを維持し続けることができたと思います。

3. コミュニティをアップデートするために自分ができることを考える

SQL Serverに関する技術記事を読んだり勉強会に参加していると、以下のようなことを思いつくことがあります。

「こういうことが知りたいんだけどちょうどいい記事が無いな」

例えば、「クエリストアを使わず、サーバー負荷を上げずにCPUボトルネックなクエリを全体最適の観点で特定する方法は無いだろうか」という疑問から、Qiitaの記事にまとめました。

「この概念、自分だったらもっと分かりやすく説明できそう」

例えば、SQL Serverのロックについて分かりやすく説明することを目指して書いたQiitaの記事のPV数は約7万で、自分が書いた記事の中では最もPV数が多い記事の1つです。また、「SQL Server ロック」でGoogle検索すると1番目にヒットするため、SQL Serverのロックという概念の理解の助けになれていると感じています。

「こういう話をしている人がいないけど自分がやったらおもしろそう」

大規模な自社サービスでSQL Serverを運用しているという経験はあまり得られる機会も少なく、発生した障害の詳細や解決方法について話したらおもしろいのではと思い、テックブログにまとめました。このように、どうやったら自分が所属している技術コミュニティをアップデートできるか、ということを考え、思いついたことは実践してみる、ということを継続するようにしていました。

このように、「自分が参加しているコミュニティにまだ無いと思われる知見」を持ち込んだり、「より分かりやすくしてあげることでみんなの役に立ちそうなこと」をアウトプットすることで、コミュニティのアップデートに貢献できると思い、行動していました。

4. 社内向けの資料作成時も、公開可能な情報はQiitaやTwitterで発信

私のアウトプットは、業務の中で生じた疑問や課題についての検証結果をまとめることが多いです。業務に紐づいているため、社内にしか公開できない情報もありますが、その中で公開可能な検証結果についてはQiitaやTwitterで発信するように意識していました。

例えば、「変更の追跡」という機能を導入する際は、以下のようにアウトプット先を切り替えていました。

  • 「どの環境のどのDBのどのテーブルに導入するか」といった情報は外部公開できないため、社内Wikiに記載
  • 設定をプロダクション環境へ反映する際にハマった点があり、純粋に技術的な内容であったためQiitaで公開し、URLを社内Wikiに記載

このように、「アウトプットのためにネタを考える」のではなく、「業務の中から外部へアウトプット可能な箇所を切り出す」ことで、ネタを考える時間も、別途資料を作成する時間もできる限り省略するように意識していました。

「何かアウトプットしなくては」という意識だとハードルが高いと感じてしまいますが、普段の業務の中で自然と外部へのアウトプットが生まれるよう意識していたことで、アウトプットのハードルを低く保ち続けられたと思います。

Microsoft MVPの審査の際に提出した文章

他のMVP受賞者の方を参考に、私もMVPの審査の際に提出した文書を公開したいと思います。

なぜMVPになりたいのか?

コミュニティへの良い影響力を強めていきたいからです。

コミュニティのことを強く意識するきっかけとなったのは、2019年11月にPASS SUMMITへ参加したことです。学んだことをみんなが積極的にコミュニティへ還元することでPASSコミュニティが強くなり、それによってスピーカー自身もコミュニティから有益なフィードバックをもらえるという正のサイクルがうまく回っていると感じました。この経験から、私自身も学んだことをコミュニティに還元していくことで日本のSQL Serverコミュニティをより強く、より良いものにしていきたいと思うようになりました。MVPに認定いただけることで、今後のコミュニティへの貢献活動のさらなるモチベーション向上につながると思っています。

この1年間のコミュニティへの貢献の中で最もインパクトが大きいものは?

勤務している会社が展開している、日本最大級のファッションECサイト「ZOZOTOWN」で生じたSQL Serverに関する障害と、それを調査して原因を解消させた話をコミュニティに共有したことです。db tech showcase2019での登壇と、審査期間ではないですが会社のテックブログ(1万PV、120はてブ、Facebook250シェア)と、ユーザーコミュニティの勉強会での登壇を通して、多くの人々に大規模なSQL Serverを使ったシステムにおける障害事例や調査ノウハウを共有しました。登壇内容は、他社の教育資料として活用されているそうです。今までのコミュニティに持ち込まれていなかった情報を共有する、ということを日ごろから意識しており、ZOZOTOWNはSQL Serverを使ったサービスとしては日本最大級であり、そこで生じた生々しい障害と調査の過程を公開するということは今までのコミュニティではあまりされていなかったと思います。他にも、ZOZOTOWNを運用していく中で生じた課題と解決策についてブログで発信しております。例えば、こちらの記事や、こちらの記事などです。

今後コミュニティに対してどういった影響を与えていきたいか?

私がSQL Serverコミュニティに足りないと感じている点は、実務に直結する有益なノウハウの公開が不足している点です。

この問題点を踏まえて、たとえばこのブログ記事のように、単純に拡張イベントの使い方ではなく、「特定の目的をもった拡張イベントの設定方法と、解析方法」というように、直接実務で使えるようなノウハウをひとまとめの記事にして共有することを意識しています。

他の例として、こちらの記事GitHubで公開しているクエリのように、ZOZOTOWNの運用経験から得られた情報後追いのためのDMVのダンプクエリの仕組みを整備して公開しております。

他の例として、こちらのブログのように、メンテ無しでプロダクション環境でのデプロイを成功させるためのノウハウについて、自社の高トラフィックなWebサイトでも成功例のある方法を紹介しています。

今年も、同様の貢献をコミュニティに対して行っていきます。合わせて、自身が最も得意としているPerformance Tuningについて、ウェビナーの講師として解説動画を収録して公開する予定です。日本のSQL Serverのチューニングレベルを引き上げていくために、ビデオの公開やユーザ勉強会でチューニングまわりの情報提供なども実施していきます。

コミュニティをより良くしていくために現在行っている活動は?

ユーザーコミュニティの勉強会やDBカンファレンスで定期的に登壇したり、技術的な記事を定期的に執筆したりすることで、会社の業務を通して得たSQL Serverの知見をコミュニティに還元しています。

Microsoft MVP日本事務局の方からのコメント

今回のブログ執筆にあたり、Microsoft MVP日本事務局の森口様からコメントをいただきました。森口様、素敵なコメントをありがとうございました!

Microsoft森口様より

国内でも有数のアクセスを集めるECサイト運営に関わるお仕事を通じて得たユニークな知見を登壇およびブログ寄稿などコミュニティ活動を通じて積極的に発信いただき、多くのデータベースエンジニアの学びに寄与されたご貢献により、この度廣瀬さんにData PlatformカテゴリでMicrosoft MVPアワードを授与いたしました。

業務で学んだ実践的なSQL Serverの知識を、社内で共有するだけにとどまらず社外のコミュニティメンバーの技術の学習のためにご尽力いただけますと、今後さらにSQL Serverを活用したい方への貴重な情報源となります。ひいては日本全体のSQL Serverコミュニティの力となる、大変ありがたい活動です。今後はぜひMVPとしてさらにコミュニティ活動をお楽しみいただくとともに、マイクロソフトとのコラボレーションにより製品やコミュニティをより良くするためにお力をお借りできましたら幸いです。

まとめ

Microsoft MVPの受賞できたことはとても喜ばしく、アウトプットを継続していくためのモチベーションにもつながりました。これからもコミュニティへ自分が良い影響を与えていけるように考えながら活動していきたいと思います。

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